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2019年03月26日

痰瘀互結証と生薬製剤二号方

痰瘀互結証とウチダの『生薬製剤二号方』

 痰証を抱える実際の患者さんにおいては、痰証が遷延して痰瘀互結証に発展していることが多いので注意が必要である。痰滞と血瘀が互結した状況では、袪痰の方剤類に活血化瘀薬を加えて対応すべきであるが、エキス製剤を利用する場合は袪痰剤に活血化瘀剤を併用する。最近では、ウチダ和漢薬から『生薬製剤二号方』という名で製品化された活血化瘀剤があり、血瘀が併存するあらゆる病態に「併用方剤」として極めて有用である。それゆえ、あらゆるタイプの痰瘀互結証においても、ウチダの『生薬製剤二号方』を、適切な袪痰剤に加えて対処することができる。

 たとえば、66歳の男性で脳梗塞後の後遺症。主訴の後頭部の頭重・頭のふらつき感などとともに、不整脈・舌苔は微黄膩・舌下脈絡の怒張・血圧170〜117などの症候を伴うものに対し、釣藤散エキス散・ウチダの生薬製剤二号方・杞菊地黄丸の三方剤併用で、主訴および高血圧なども改善。

 59歳の男性で、主訴の頭のふらつき・前頭部の頭痛・息切れなどとともに、寒がる・舌質は紫がかって暗晦・舌苔は白厚膩などの症候を伴うものに対し、《脾胃論》の半夏白朮天麻湯エキス顆粒の投与で主訴に対して即効性が得られたが、しばらくすると効力が低下。そこで、ウチダの生薬製剤二号方の二分の一量を併用することで効力が安定した。

 なお、ウチダの『生薬製剤二号方』の成分は、丹参・川芎・紅花・芍薬・木香・香附子の六味であり、二十数年前に中国で開発され冠状動脈性心疾患や脳梗塞などに顕著な効能を持つ『冠心二号方』に極めて類似しており、方意は全く同様と考えてよい。また、十数年前に業界内ではユニークな健康食品として一世を風靡しながらも(丹参が医薬品に昇格したために)消滅の憂き目にあった『霊丹参』(霊芝+丹参)が、形と内容を変え、正式な医薬品として再登場したものと言えなくもない。
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2018年12月21日

村田漢方堂薬局における食事療法の考え方

村田漢方堂薬局における食事療法の考え方

 食事療法の重要性は言うまでもないことのようですが、村田漢方堂薬局では食事に対する規制が、他の漢方薬局さんに比べて、あまりにも甘すぎるのではないか、と言われたことがあります。しかしながら、そのことで多くの人には慶ばれているようです。

 虚寒証タイプの人には、生ものや冷たいものを取り過ぎないように注意し、呼吸器系の疾患の人にはタバコを止めるなり減量するなりの注意はしますが、これは常識の範囲内でしょう。

 むしろ問題になるのは、当方に辿り着かれる以前に各東洋医学系の医院や薬局さんなどから、昨今ブームの温め療法を強く奨められ、それをクソ真面目に実行されている人達の問題のほうが、食事療法以前に大きな問題を抱えているように思われてなりません。

 過度な温め療法により、炎症性疾患をさらに悪化させていた実例は、本当に枚挙に暇(いとま)がありません!

 ともあれ、食事療法がまず第一で、薬物治療は補助的なものに過ぎないと公言される漢方系の先生方が意外に多いようですが、それはちょっと言い過ぎではないかと思われます。なぜなら彼らは、

「食事療法を守らないから病気がよくならないんですよ!」

 と、往々にして厳格な食事療法を守れない患者さんを攻め立て、御自分の漢方に対する腕の悪さにたいする反省のかけらも見られないケースがあまりにも多いように思われるからです。

 どうも、そのような患者さんばかりが困惑されて、当方の薬局に来られているようですよ。

 例によってトウヘンボクを言うつもりではないのですが、適切な漢方薬が第一で、食事療法は補充的なものだと思いますよ。

 たとえば、タバコは食事ではありませんが、最近も成人男性の気管支喘息で相談にみえた人で、タバコを吸っていたので当然、こればかりは止めてもらいました。ところで、この方は運よく、一年もしない間に発作が全く消滅したところで、タバコを再開してしまったのです。

 当然、小生とて「それはチョット早いんじゃ〜ないの!?」と注意しましたが、彼は頭をかくばかりです。

 再発して苦しくなったら、自分のことだからね〜〜〜、そのときになったら懲りるでしょうけどね〜、とイヤミを言う程度にしておきましたが、その後、10年間、タバコを吸いながらも今のところ再発はしていません。

 漢方薬も適当に連用されているのが良いのでしょう。

 このことがあるからといって、タバコの害を否定しているわけではありませんが、ケース・バイ・ケースでアドバイスも異なるものだということです。

 病気にならない為の養生するばかりが人生か? 

 病気の再発を恐れて萎縮するばかりが人生か?

 様々に考えるところがあるからです。

 但し、ここで断言しておきたいことは、

 食事制限が明らかに有効なアトピー性皮膚炎や糖尿病および高血圧症や腎臓疾患など

 これらについては、食事制限による効果は大きいことだけは間違いないようです。
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2018年12月19日

昨今盛んな「漢方の科学化」の大きな問題点

 昨今盛んな「漢方の科学化」の大きな問題点

 「科学」とは一体どういう意味なのか? この言葉は安易に使用されやすくあやふやな言語で、使用される文脈によってはかなり怪しい使い方をされます。本来、理系のみに用いられるはずのこの言葉は、過去も現在も、文系方面でも盛んに使用されてきました。ずいぶんあやふやな言語に成り下がっています。

 理系で使用される「科学」という言葉も同様です。たとえば、医学・薬学方面における、とりわけ「漢方と漢方薬」の分野における使用方法です。

 昨今では「漢方の科学化」というスローガンのもとに、あるいは科学的実証という名のもとに、漢方医学や中医学の特質の一つである「個別性の重視」が忘れ去られ、同一方剤による普遍性の追求、つまり同一病名や症状に目標を絞って、何人中に何人有効であったかの検討が盛んなようです。

 弁証論治はおろか方証相対の概念すら無視したこの分野の研究に過度な期待を寄せると、次元の低い漢方医学に堕するのみではないでしょうか?
 実際には「漢方の科学化」というのは言い換えれば「漢方の西洋医学化」あるいは「エビデンス漢方」という意味にほかならないようです。

 ところで、中医学こそは既に科学であり、陰陽五行学説を基礎とした構造主義科学であることをもっと認識すべきでしょう。
 生体自身は有機的に構造化されており、あらゆる自然環境や人為的な環境に影響されるとする中医学特有の「整体観」こそは構造主義科学理論としての中医学の基本概念でもあります。

 科学は仮説に基づく理論大系化の試みであり、現実世界に十分有効な理論であれば、一つの立派な科学理論として成立するのです。

 中国の伝統医学・薬学である中医学および中薬学は構造主義科学であり、構造化された生体内を「五行相関にもとづく五臓を頂とした五角形」として捉えることから出発し、臨床に直結した医学薬学理論として常に生体内に共通した普遍性の探究を継続して基礎理論の確認と補完を図りつつ、最終目的である疾病状態における個体差(特殊性)の認識と治療へとフィードバックさせる医学・薬学であるのです。

 ところが、日本の伝統医学ともいわれる「漢方医学」は、江戸期に吉益東洞により陰陽五行学説を空論憶説として否定して以来、没理論の自縄自縛の自己矛盾に陥ったまま現在に到っています。

 それゆえ、昨今しきりに喧伝される「漢方の科学化」というスローガンは、吉益東洞の「親試実験」という没理論の世界、自縄自縛の自己矛盾の世界となんら変わるところがないわけです。

 実をいえばやはり「科学」というのは某教授もご高著の題名に使用されたごとく「科学は錯覚である」というのは名言だと思われます。
 「科学」や「科学的」という錦の御旗を掲げている主張に対しては、常に半分くらいは疑ってかかるべきでしょう。

 日本漢方の閉塞状態を脱するには、中国の伝統医学の本質である陰陽五行学説を土台とする中医学理論を導入して「中医漢方薬学」の方向を目指すべきではないでしょうか?

参考文献:構造主義科学としての中医漢方薬学:中医学は構造主義科学
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2018年12月18日

中医学に日本漢方を合体した中医漢方薬学は 構造主義科学

中医学に日本漢方を合体した中医漢方薬学は 構造主義科学である

中医学は構造主義科学   
  
 生体内の生命活動は構造化されており、人体の生命活動を、五行相関にもとづく五臓を頂とした五角形が基本構造であると捉えているのが中医学である。 

 五臓を頂とした五角形にゆがみやひずみが生じたときが病態であり、病態分析の基礎理論となる構造法則の原理が、陰陽五行学説である、と考えればわかりやすい。 

 陰陽五行学説に基づく中医学理論は、臨床の現実に即して展開され、原理的に新たな理論の充実を図ることが可能である。 

 それゆえ、治療の成否は中医学基礎理論の知識を、実際の臨床にどのように活用し、展開させるかという一事に関わって来る。 

 中医学は、構造化された生体内を「五行相関に基づく五臓を頂とした五角形」として捉えることから出発し、臨床に直結した医学理論として、常に生体内に共通した普遍性の探究を継続しながら、基礎理論の確認と補完を図りつつ、疾病状態における患者個々の特殊性の認識(把握)を行なうとともに、この認識に基づく治療へとフィードバックさせる特長をもった医学である。 

 古人は医学領域において五行理論を利用することによって、五臓相互の関係の説明に役立てている。気血津液精という基礎物質の生成・転化・輸布・排泄などの生理的・病理的関係にもとづいて五行理論を巧みに利用し、相生・相克・相乗・相侮などの概念によって五臓相互の関係を説明しているわけである。 

 医学領域における表現形式として五行理論を巧みに利用している点に留意すべきで、このような中国古代人のプラグマチズム的精神を体現した融通性は高く評価すべきであろう。
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2018年12月16日

六味丸に対する中医漢方薬学派の口訣集(基本方剤の中医学考察)

 六味丸に対する中医漢方薬学派の口訣集

主として漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記 より引用抜粋し、一部修正
 六味丸は、腎虚の基本方剤である。
 専門的には、肝腎陰虚に適応する方剤として有名であるが、有名であっても日本国内では、そうでもない。
 六味丸の各社製品は、あまり売れ行きが思わしくないといわれる。

 逆に、腎陽虚や腎陰陽両虚に適応する「八味丸」や「牛車腎気丸」ばかりが、繁用され、配合中の「附子(ぶし)」の軽度の弊害をもたらせている症例をよく見かける。

 そう! この温暖化がひどく、食糧事情も豊か過ぎる日本国内において、これほど「附子」が配合された方剤が、大量に使用される現象には、些か驚かされるどころか、明らかに間違っている、と思っている。

 たとえ腎虚があっても、明らかな腎陽虚は見られず、むしろ陰虚から派生した虚熱の証候(一連の症候)が見られているのに、それでも八味丸や牛車腎気丸が出されているケースが、かなり多いのである。
 即刻、六味丸や知柏腎気丸などに切り替えるべきケースが多い。

 いきなり、八味丸乱用の日本社会の錯誤を取上げたが、実際には、六味丸こそふさわしいケースが多いからである。
 あるいは、少なくとも八味丸や牛車腎気丸から、附子を去った方がよいケースが多い、といいたいのだ。

 ということで、小生の経営する漢方薬局では、六味丸類は、しばしば使用するが、近年、八味丸や牛車腎気丸は、ほとんどお出しするケースが、皆無に近い、ということである。

 たとえ、「附子」が適応しそうなケースでも、なるべく使用しないで、附子抜きで反応を見ると、つまり、六味丸+肉桂の配合の製剤で、充分に対応できると思っている。
 必要もないのに「附子剤」を乱用すれば、肺陰を損傷しやすく、肺熱をもたらせたり、乾燥咳や目の充血を招いたりする。
 感冒などに罹患しているとき、不必要に乱用すれば、肺炎さへ誘発しかねないのである。

 日本国内の、(北海道や東北地方などは知らないが)、多くの地域の温暖化現象と、暖房設備の充実、豊かさ過剰な食糧事情から、そうそう附子配合方剤の必要性は感じられない、ということである。
 もっと、もっと六味丸は使用されてしかるべき時代だと信じるものである。

 なお、当然のことながら、弁証論治の法則からは、滅多に六味丸単独で、難病・慢性病に充分な対処が出来るものではない。
 一般論になるが、中国の陳潮祖教授の論著を参考に書いた「中医漢方薬学」の配合法則を参照されたい。(何種類の漢方薬が必要か)

 ネットサーフィンしていたとき、たまたま遭遇した、日本漢方専門の薬剤師の方が、質疑応答で、六味丸は、アトピーには使用することはないと返事していたので、驚いてしまった。

 中医学における弁証論治の世界では、日本人のアトピー性皮膚炎の本治法として、六味丸系列の方剤を使用する機会が大変多いものである。
 六味丸単独で使用されることは、子供さんの夜尿症であり得るくらいで、多くは他剤と併用しないと、正確な弁証論治に基づいた、適切な配合にならないことが多い。
 
以上、簡単に述べたことは、中医学派では当然のことで、何も小生の発明でもなんでもない。
 中医学理論をあまりご存じない、上述のような日本漢方の薬剤師さんが、どうどうと述べられること事態、問題ナシとしない。

 そもそも、中医学で最も重視する補腎の方剤を、西洋医学的な病名だけで、使用する、しないを決められるものではない。
 
なお、小生の薬局では、六味丸に猪苓湯の併用を土台として用いることも多いが、あくまで弁証論治にもとづく結果としてのことで、決して西洋医学的な病名で、漢方薬方剤の応用範囲を決めてはならない。
   これを簡単に説明すれば、腎系から体内の水分調節を行い、また膀胱系の方からは猪苓湯が体内の水分調節を行ってくれる、ということである。
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posted by ヒゲ薬剤師 at 20:56| 山口 ☔| 基本方剤の考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする