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2018年12月21日

村田漢方堂薬局における食事療法の考え方

村田漢方堂薬局における食事療法の考え方

 食事療法の重要性は言うまでもないことのようですが、村田漢方堂薬局では食事に対する規制が、他の漢方薬局さんに比べて、あまりにも甘すぎるのではないか、と言われたことがあります。しかしながら、そのことで多くの人には慶ばれているようです。

 虚寒証タイプの人には、生ものや冷たいものを取り過ぎないように注意し、呼吸器系の疾患の人にはタバコを止めるなり減量するなりの注意はしますが、これは常識の範囲内でしょう。

 むしろ問題になるのは、当方に辿り着かれる以前に各東洋医学系の医院や薬局さんなどから、昨今ブームの温め療法を強く奨められ、それをクソ真面目に実行されている人達の問題のほうが、食事療法以前に大きな問題を抱えているように思われてなりません。

 過度な温め療法により、炎症性疾患をさらに悪化させていた実例は、本当に枚挙に暇(いとま)がありません!

 ともあれ、食事療法がまず第一で、薬物治療は補助的なものに過ぎないと公言される漢方系の先生方が意外に多いようですが、それはちょっと言い過ぎではないかと思われます。なぜなら彼らは、

「食事療法を守らないから病気がよくならないんですよ!」

 と、往々にして厳格な食事療法を守れない患者さんを攻め立て、御自分の漢方に対する腕の悪さにたいする反省のかけらも見られないケースがあまりにも多いように思われるからです。

 どうも、そのような患者さんばかりが困惑されて、当方の薬局に来られているようですよ。

 例によってトウヘンボクを言うつもりではないのですが、適切な漢方薬が第一で、食事療法は補充的なものだと思いますよ。

 たとえば、タバコは食事ではありませんが、最近も成人男性の気管支喘息で相談にみえた人で、タバコを吸っていたので当然、こればかりは止めてもらいました。ところで、この方は運よく、一年もしない間に発作が全く消滅したところで、タバコを再開してしまったのです。

 当然、小生とて「それはチョット早いんじゃ〜ないの!?」と注意しましたが、彼は頭をかくばかりです。

 再発して苦しくなったら、自分のことだからね〜〜〜、そのときになったら懲りるでしょうけどね〜、とイヤミを言う程度にしておきましたが、その後、10年間、タバコを吸いながらも今のところ再発はしていません。

 漢方薬も適当に連用されているのが良いのでしょう。

 このことがあるからといって、タバコの害を否定しているわけではありませんが、ケース・バイ・ケースでアドバイスも異なるものだということです。

 病気にならない為の養生するばかりが人生か? 

 病気の再発を恐れて萎縮するばかりが人生か?

 様々に考えるところがあるからです。

 但し、ここで断言しておきたいことは、

 食事制限が明らかに有効なアトピー性皮膚炎や糖尿病および高血圧症や腎臓疾患など

 これらについては、食事制限による効果は大きいことだけは間違いないようです。
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2018年12月19日

昨今盛んな「漢方の科学化」の大きな問題点

 昨今盛んな「漢方の科学化」の大きな問題点

 「科学」とは一体どういう意味なのか? この言葉は安易に使用されやすくあやふやな言語で、使用される文脈によってはかなり怪しい使い方をされます。本来、理系のみに用いられるはずのこの言葉は、過去も現在も、文系方面でも盛んに使用されてきました。ずいぶんあやふやな言語に成り下がっています。

 理系で使用される「科学」という言葉も同様です。たとえば、医学・薬学方面における、とりわけ「漢方と漢方薬」の分野における使用方法です。

 昨今では「漢方の科学化」というスローガンのもとに、あるいは科学的実証という名のもとに、漢方医学や中医学の特質の一つである「個別性の重視」が忘れ去られ、同一方剤による普遍性の追求、つまり同一病名や症状に目標を絞って、何人中に何人有効であったかの検討が盛んなようです。

 弁証論治はおろか方証相対の概念すら無視したこの分野の研究に過度な期待を寄せると、次元の低い漢方医学に堕するのみではないでしょうか?
 実際には「漢方の科学化」というのは言い換えれば「漢方の西洋医学化」あるいは「エビデンス漢方」という意味にほかならないようです。

 ところで、中医学こそは既に科学であり、陰陽五行学説を基礎とした構造主義科学であることをもっと認識すべきでしょう。
 生体自身は有機的に構造化されており、あらゆる自然環境や人為的な環境に影響されるとする中医学特有の「整体観」こそは構造主義科学理論としての中医学の基本概念でもあります。

 科学は仮説に基づく理論大系化の試みであり、現実世界に十分有効な理論であれば、一つの立派な科学理論として成立するのです。

 中国の伝統医学・薬学である中医学および中薬学は構造主義科学であり、構造化された生体内を「五行相関にもとづく五臓を頂とした五角形」として捉えることから出発し、臨床に直結した医学薬学理論として常に生体内に共通した普遍性の探究を継続して基礎理論の確認と補完を図りつつ、最終目的である疾病状態における個体差(特殊性)の認識と治療へとフィードバックさせる医学・薬学であるのです。

 ところが、日本の伝統医学ともいわれる「漢方医学」は、江戸期に吉益東洞により陰陽五行学説を空論憶説として否定して以来、没理論の自縄自縛の自己矛盾に陥ったまま現在に到っています。

 それゆえ、昨今しきりに喧伝される「漢方の科学化」というスローガンは、吉益東洞の「親試実験」という没理論の世界、自縄自縛の自己矛盾の世界となんら変わるところがないわけです。

 実をいえばやはり「科学」というのは某教授もご高著の題名に使用されたごとく「科学は錯覚である」というのは名言だと思われます。
 「科学」や「科学的」という錦の御旗を掲げている主張に対しては、常に半分くらいは疑ってかかるべきでしょう。

 日本漢方の閉塞状態を脱するには、中国の伝統医学の本質である陰陽五行学説を土台とする中医学理論を導入して「中医漢方薬学」の方向を目指すべきではないでしょうか?

参考文献:構造主義科学としての中医漢方薬学:中医学は構造主義科学
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2018年12月18日

中医学に日本漢方を合体した中医漢方薬学は 構造主義科学

中医学に日本漢方を合体した中医漢方薬学は 構造主義科学である

中医学は構造主義科学   
  
 生体内の生命活動は構造化されており、人体の生命活動を、五行相関にもとづく五臓を頂とした五角形が基本構造であると捉えているのが中医学である。 

 五臓を頂とした五角形にゆがみやひずみが生じたときが病態であり、病態分析の基礎理論となる構造法則の原理が、陰陽五行学説である、と考えればわかりやすい。 

 陰陽五行学説に基づく中医学理論は、臨床の現実に即して展開され、原理的に新たな理論の充実を図ることが可能である。 

 それゆえ、治療の成否は中医学基礎理論の知識を、実際の臨床にどのように活用し、展開させるかという一事に関わって来る。 

 中医学は、構造化された生体内を「五行相関に基づく五臓を頂とした五角形」として捉えることから出発し、臨床に直結した医学理論として、常に生体内に共通した普遍性の探究を継続しながら、基礎理論の確認と補完を図りつつ、疾病状態における患者個々の特殊性の認識(把握)を行なうとともに、この認識に基づく治療へとフィードバックさせる特長をもった医学である。 

 古人は医学領域において五行理論を利用することによって、五臓相互の関係の説明に役立てている。気血津液精という基礎物質の生成・転化・輸布・排泄などの生理的・病理的関係にもとづいて五行理論を巧みに利用し、相生・相克・相乗・相侮などの概念によって五臓相互の関係を説明しているわけである。 

 医学領域における表現形式として五行理論を巧みに利用している点に留意すべきで、このような中国古代人のプラグマチズム的精神を体現した融通性は高く評価すべきであろう。
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2018年12月16日

六味丸に対する中医漢方薬学派の口訣集(基本方剤の中医学考察)

 六味丸に対する中医漢方薬学派の口訣集

主として漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記 より引用抜粋し、一部修正
 六味丸は、腎虚の基本方剤である。
 専門的には、肝腎陰虚に適応する方剤として有名であるが、有名であっても日本国内では、そうでもない。
 六味丸の各社製品は、あまり売れ行きが思わしくないといわれる。

 逆に、腎陽虚や腎陰陽両虚に適応する「八味丸」や「牛車腎気丸」ばかりが、繁用され、配合中の「附子(ぶし)」の軽度の弊害をもたらせている症例をよく見かける。

 そう! この温暖化がひどく、食糧事情も豊か過ぎる日本国内において、これほど「附子」が配合された方剤が、大量に使用される現象には、些か驚かされるどころか、明らかに間違っている、と思っている。

 たとえ腎虚があっても、明らかな腎陽虚は見られず、むしろ陰虚から派生した虚熱の証候(一連の症候)が見られているのに、それでも八味丸や牛車腎気丸が出されているケースが、かなり多いのである。
 即刻、六味丸や知柏腎気丸などに切り替えるべきケースが多い。

 いきなり、八味丸乱用の日本社会の錯誤を取上げたが、実際には、六味丸こそふさわしいケースが多いからである。
 あるいは、少なくとも八味丸や牛車腎気丸から、附子を去った方がよいケースが多い、といいたいのだ。

 ということで、小生の経営する漢方薬局では、六味丸類は、しばしば使用するが、近年、八味丸や牛車腎気丸は、ほとんどお出しするケースが、皆無に近い、ということである。

 たとえ、「附子」が適応しそうなケースでも、なるべく使用しないで、附子抜きで反応を見ると、つまり、六味丸+肉桂の配合の製剤で、充分に対応できると思っている。
 必要もないのに「附子剤」を乱用すれば、肺陰を損傷しやすく、肺熱をもたらせたり、乾燥咳や目の充血を招いたりする。
 感冒などに罹患しているとき、不必要に乱用すれば、肺炎さへ誘発しかねないのである。

 日本国内の、(北海道や東北地方などは知らないが)、多くの地域の温暖化現象と、暖房設備の充実、豊かさ過剰な食糧事情から、そうそう附子配合方剤の必要性は感じられない、ということである。
 もっと、もっと六味丸は使用されてしかるべき時代だと信じるものである。

 なお、当然のことながら、弁証論治の法則からは、滅多に六味丸単独で、難病・慢性病に充分な対処が出来るものではない。
 一般論になるが、中国の陳潮祖教授の論著を参考に書いた「中医漢方薬学」の配合法則を参照されたい。(何種類の漢方薬が必要か)

 ネットサーフィンしていたとき、たまたま遭遇した、日本漢方専門の薬剤師の方が、質疑応答で、六味丸は、アトピーには使用することはないと返事していたので、驚いてしまった。

 中医学における弁証論治の世界では、日本人のアトピー性皮膚炎の本治法として、六味丸系列の方剤を使用する機会が大変多いものである。
 六味丸単独で使用されることは、子供さんの夜尿症であり得るくらいで、多くは他剤と併用しないと、正確な弁証論治に基づいた、適切な配合にならないことが多い。
 
以上、簡単に述べたことは、中医学派では当然のことで、何も小生の発明でもなんでもない。
 中医学理論をあまりご存じない、上述のような日本漢方の薬剤師さんが、どうどうと述べられること事態、問題ナシとしない。

 そもそも、中医学で最も重視する補腎の方剤を、西洋医学的な病名だけで、使用する、しないを決められるものではない。
 
なお、小生の薬局では、六味丸に猪苓湯の併用を土台として用いることも多いが、あくまで弁証論治にもとづく結果としてのことで、決して西洋医学的な病名で、漢方薬方剤の応用範囲を決めてはならない。
   これを簡単に説明すれば、腎系から体内の水分調節を行い、また膀胱系の方からは猪苓湯が体内の水分調節を行ってくれる、ということである。
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2018年12月15日

六味丸 (六味地黄丸)出典『小児薬証直訣』(基本方剤の中医学考察)

六味丸 (六味地黄丸)出典『小児薬証直訣』

 六味地黄丸、つまり六味丸は、補益薬の中でも、滋補腎陰法の方剤として、もっとも基本的な方剤である。八味丸のように適応症を間違えると 肺陰を損傷する恐れのある附子(ブシ)や肉桂(ニッケイ)などを除去して構成されたものが、この六味丸である。

 まずは、中医学的な方剤の効果・効能を、四川科学技術出版社発行の『中医方剤与治法』から拙訳で抜粋引用させて頂く。
【薬物構成】 熟地黄240g 山茱萸120g 乾山薬120g 沢瀉90g 茯苓90g 牡丹皮90g  

【用法】 粉末を蜜丸にし,1日に2〜3回,空腹時に1回につき3丸(9g)を湯で服用する。湯剤とする場合は用量を減す。

 【主治】 腎陰虧損・虚火上炎による足腰のだるさや疼痛・歯の動揺・小便が出渋る・消渇・耳鳴び・目のかすみ・勃起しやすい・咽の乾燥・舌痛・盗汗・不眠・頭のふらつき・めまい・遺精・夢精・踵の疼痛・喀血・声が出ない・呼吸困難・咳嗽・津液の灼傷による痰証・尺脉の虚大など。

 【分析】 腎は「先天の本」である。腎中の「真陰」は人体の陰液の根本であり,各臓腑を濡潤・滋養する作用がある。腎陰が虧損すると,本臓自体が病むばかりでなく,五臓のすべてが影響を受ける。本症の発病機序の分析は以下の通りである。
 (1)腎は骨を主り,髄を生じ,歯は骨の余りであり,腰は腎の府である。それゆえ,腎陰虧損により腎精が不足すると,骨髄が空疎となるために足腰がだるく無力・歯の動揺などを生じる。腎は主水の臓であるから,腎陰虧損により主水機能が失調すると小便が出渋るようになる。腎が虚すと固摂失調を生じて頻尿となり,津液を損耗すると口渇を生じて消渇となる。腎は耳に開竅し,眼球の瞳孔は腎に属しているので,腎陰が虧損すると耳鳴・目のかすみを生じる。男子の性器が勃起しやすくなるのは,陰虚陽旺・相火亢盛によるものである。以上は,腎の本臓自病〔腎臓自体の病変〕によって生じるものである。
 (2)心は陽に属して上焦に位置し,その属性は火である。腎は陰に属して下焦に位置し,その属性は水である。正常な生理状態下では,心陽は 腎に下降して腎水を寒(ひや)さないようにしており,腎水も心を上済して心火を亢ぶらないようにしている。
この状態を「心腎相交」「水火既済」という。
それゆえ,腎陰が虧損して腎水が上昇せず,心陽だけが下降して虚火が少陰経脉を循環して上炎すると,咽の乾燥・舌痛を生じる。陰は虚し,陽が擾乱して陽が陰分を蒸迫すると,津液を漏泄して盗汗を生じる。陰虧陽亢のために心神不安を生じると不眠になる。以上は,腎病が心に波及したための,心腎同病により生じるものである。  
(3)肝腎は同源であり,腎陰は肝陰と相互資生の関係にあり,一方が充盛すれ両者ともに充盛となり,一方が衰えれば両者ともに衰退する。したがって,腎中の陰精が虧損すると肝陰虚衰を引き起こし,陰が陽を制御できずに肝陽が上亢するために,頭のふらつき・めまいなどを生じる。肝は疏泄を主るが,肝陽亢盛により疏泄が過剰となり,そのうえ腎陰虚損のために収蔵することができないと,遺精・夢精を生じる。肝は筋を主るが,肝腎陰虚により筋の栄養が失調すると,踵の疼痛を生じる。以上は,腎病が肝に及んだための,肝腎同病による症状である。  
(4)腎陰は人体における陰液の根本であるから,腎陰が虚したために肺陰を滋潤することができないと,燥熱内生・虚火犯肺により,咳嗽・喀血・呼吸困難・発声困難などを生じる。これらは,腎病が肺に及んでもので,病位は肺で,病機が腎の症状である。  
(5)腎は先天の本であり,脾は後天の本であるから,脾と腎は相互に助け合い相互に促進し合う。腎陰不足により陰火が上昇すると,脾が主る津液を運化する機能が障害されるばかりでなく,津液を煉灼して痰涎を生じる。これは,腎病が脾に及んだための,脾腎同病による症状である。

 以上のように,本法の方剤で治療できる症状は多いが,つまるところは腎陰虧損・虚火上炎によって生じたものである。  

【病機】 腎陰虧損・虚火上炎

【治法】 滋陰補腎法
 
【方意】 真陰虧損により,陰が陽を制御できずに虚火亢盛となった場合のキーポイントは,補陰によって陽を制御することで,腎陰が充足すれば諸症状はおのずと解消する。この治法こそが「水の主を壮んにし,もって陽光を制す」という意味である。  主薬は熟地黄で,滋養腎陰・填精補髄〔腎陰を滋養し,精と髄を補填〕する。山茱萸は固精斂気・収斂虚火するもので,肝の疏泄妄行を防ぎ,腎精を固蔵させる。山薬は補脾固精し,脾気を健運させて腎精の来源を開拓する。この山茱萸と山薬は,肝や脾を兼治するもので,補助薬である。腎は主水の臓であるから,滋補を行うときには水湿の壅滞を防ぐ必要がある。このため,滋補腎陰の方剤中に少量の利水薬を配合して腎の主水機能に配慮し,補しても滞らないようにすると,補薬の作用をさらによく発揮させることができる。
 なお,本方で治療することができる症状は,@腎虚による症状・A陽亢による症状・B水液失調による症状,の三組にまとめることができる。それゆえ,滋補腎陰の熟地黄に対して通調水道の沢瀉で補佐し,健脾固腎の山薬に対して淡滲利湿の茯苓で補佐し,収斂精気の山茱萸に対して清瀉虚火の牡丹皮で補佐し,補陰の熟地黄に対して瀉陽の牡丹皮で補佐しているが,これらは《霊枢・終始篇》で述べられる「陰虚して陽盛んなるは,先ずその陰を補い、後にその陽を瀉してこれを和す」という治療法則に該当する。このように,沢瀉・牡丹皮・茯苓を配合する目的は,一方では小便失調・相火亢盛などによる症状を取り除き,もう一方では熟地黄・山薬・山茱萸による副作用を予防する意味がある。以上の薬物により,滋補しても邪を留めず,降泄しても正を損傷せず,補の中に瀉があって相互に扶助し合うが,これが腎陰を補う基本構成である。
 本方と補中益気湯を比較すると,処方構成における昇降関係が理解しやすくなる。ちょうど,尤在 は「陽虚では気陥不挙となることが多いので,補中益気湯には人参・黄耆・白朮・甘草を多量に用いて甘温益気し,辛平の升麻・柴胡を用いて上昇を助ける。陰虚では気が常に上昇して下降しないので,六味地黄丸には熟地黄・山茱萸・山薬など,味が濃くて重質なものを多量に用いて補陰益精し,茯苓・沢瀉の甘淡によって下降を助ける。気陥では滞ることが多いので,陳皮の辛で気滞を解消する。気の浮上では熱することが多いので,牡丹皮の寒で浮熱を清する。六味地黄丸には茯苓・沢瀉があり,補中益気湯には升麻・柴胡がある。補中益気湯には陳皮があり,六味地黄丸には牡丹皮がある。さらに,補中益気湯には人参・黄耆・ 白朮・甘草・当帰があり,六味地黄丸には熟地黄・山茱萸・山薬がある。
 このように治法は異なっても,病理においては対蹠的な共通性がある」と述べている。  

【応用】 本方は滋補腎陰法における基本方剤であり,後世多数の補腎剤が本方を加減して作られている。方中の各薬物の配合量は,臨床実際の必要性に応じて調節する。たとえば「血虚陰衰では熟地黄を君薬とし,滑精・頭暈では山茱萸を君薬とし,小便の量や濃淡に異常があるときは茯苓を君薬とし,排尿障害では沢瀉を君薬とし,心虚火盛や血[]があるときは牡丹皮を君薬とし,脾胃虚弱・皮膚枯燥では山薬を君薬」とする。


 報告によると,本方や本方から沢瀉を去り天花粉を加えたものは,糖尿病に一定の効果がある。本方に犬の下丘脳下垂体組織液の注射を組み合わせると,尿崩症に有効である。本方の加減方(生地黄・熟地黄・山薬・沢瀉・枸杞子・白芍・穀精草・木通)は,中心性網膜炎の治療に用いることができる。本方に枸杞子・菊花・当帰・赤芍・絲瓜絡・珍珠母などを加えたものの,中心性網膜炎に一定の効果がある。本方は食道上皮細胞の異常増殖(食道癌の前駆的病変)に用いて一定の効果があり,異常増殖の好転と癌細胞化防止を促進する一定の作用を示す。

 動物実験によると,本方は正常マウスに対し体重の増加・遊泳時間の延長・体力の増強作用があるほか,N−ニトロソサルコシンエチルによるマウスの胃部扁平上皮癌前駆状態の誘発率を低下させ,化学的発癌物質を接種した動物における脾臓リンパ小節の中心性増殖を活発化させ,接種移植した腫瘍の初期において単核マクロファージ系統の貪食活性を増強し,腫瘍負荷動物の血清アルブミン対グロブリンの比率を高め,腫瘤負荷動物の生存時間を延長するようである。以上のことから,本方の主な働きは生体の抗癌能力を引き出し,扶正によって去邪を達成する作用であると推論される。  

【加減方】
 
(1)杞菊地黄丸(『医級』)
 
[成分] 本方に枸杞子・菊花を加える。
[主治] 肝腎不足による頭のふらつき・めまい・目のかすみ・眼球の乾燥異物感や痛みなど。


(2)麦味地黄丸(『医級』 別名「八仙長寿丸」)

 [成分] 本方に麦門冬・五味子を加える。
 [主治] 腎虚による労嗽で、咳嗽・吐血・潮熱・盗汗・夢精・遺精など。  


(3)耳聾左慈丸(『重訂広温熱論』)
 
[成分] 本方に磁石・石菖蒲・五味子を加える。  
[主治] 熱病後期で身熱が消退して以後,腎虚精脱による耳鳴・難聴・舌質は紅・舌苔は少・脉は細数。  


(4)知柏地黄丸(『医宗金鑑』)
 
[成分] 本方に知母・黄柏を加える。
 [主治] 陰虚火旺による骨蒸潮熱・盗汗・遺精・小便が出渋って痛いなど。

−以上、四川科学技術出版社発行の『中医方剤与治法』より
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