子宮内膜症による激しい生理痛は、いまやありふれた疾患だが、桂枝茯苓丸証があっても、あきらかに気血両虚を伴っている若い女性に、ツムラ桂枝茯苓丸の医療用エキス製剤が投与され、このために胃痛と体力減退、生理期間の延長と生理量の増加を来たしたために、医療用漢方を断念して当方に相談に来られた方がある。
傷寒・金匱の方剤のみにこだわれば、確かに桂枝茯苓丸も間違いではないが、明らかに気血両虚をともなっておれば、少なくとも気虚に優れた効能を発揮する補中益気湯レベルの方剤を併用されてもよさそうなものである。
しかしながら、体質によっては朝鮮人参の峻補に過ぎるきらいがあるので、今回の相談者の場合は人参のかわりに党参使用のものでなければならないはずである。
ところで、中国古代の古方に拘れば桂枝茯苓丸ということになろうが、中医学・薬学的に考察すれば、延胡索(えんごさく)などの優れた鎮痛効果のある生薬の配合されたものを投与すべきことは常識である。
それゆえ、本来なら牛膝散(ごしつさん)や折衝飲(せっしょういん)などを主方剤とすべきであるが、保険漢方ではどうも見当たらないようだ?!
桂枝茯苓丸は確かに優れた方剤ではあるが、攻撃剤の部類に属する方剤であるから、あきらかな気虚や血虚を伴う人に単独投与すれば、覿面にその弊害が出てくるのである。
それでも漢方に懲りることなく、自費の漢方を求めて当方に訪れてくれたただけでも幸いで、一歩間違えば漢方嫌いの若者を一人増やす結果になりかねなかった事例である。
そこで当方では既に副作用が生じているツムラの桂枝茯苓丸を中止してもらい、保険適用外の建林松鶴堂から販売されている牛膝散エキス製剤と党参が配合されたイスクラの補中益気丸の二種類を併用してもらうことにした。
この記事の続報:牛膝散製剤と補中益気丸(党参入り)で正解だった桂枝茯苓丸の誤投与
【関連する記事】