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「精」− 穀精と腎精について 村田漢方堂薬局 村田恭介著
飲食物を消化吸収した後に生成される「水穀の精」(穀精)は「後天の精」であり、精気血津液における精であると同時に、気血津液を生成する基本原料でもある。つまりは各臓腑の機能活動の物質的基礎であるから「臓腑の精」ともいわれる。
さらに、この「後天の精」は、腎に貯蔵される「先天の精」という生命活動の源泉を絶えず補充し、人体の生命活動を維持する基礎物質でもある。五臓六腑を充盈した後は腎に貯蔵されることになるが、一般的には、この腎に貯蔵される精(腎精)を「精気血津液」という基礎物質における「精」であるとされている。
しかしながら、ものの順序として、まずは飲食物を消化吸収した後に生成される「水穀の精」が、精気血津液における精(穀精)であり、つぎに穀精の一部が腎陽の気化作用によって腎精と化し、腎に貯蔵されることになったものも同様に、精気血津液における精(腎精)である、と認識すべきであろう。
このように、穀精と腎精をともに包括したものが「精気血津液」における「精」の意味であるはずであるが、この「穀精」の概念については、基礎理論面では考察されても実際の臨床面においては、比較的看過されがちのように思われる。
「穀精」の概念の臨床的意義は大きく、とりわけ「穀精不足」の病態の明確化は不可欠である。腎精不足は言うまでもなく各種の補腎薬が適応するものであるが、いっぽう「穀精不足」については、少なくとも脾虚の病態に関連し、補中益気湯・参苓白朮散・四君子湯などが適応することが多い。
穀精と腎精の概念は、脾と腎の密接な関係を深く掘り下げて考察し、具体的な病態認識を行う上で極めて有意義であり、合理的で整合性のある弁証論治の内容を、さらに充実拡大させるものであると愚考している。穀精と腎精の密接な関係を有機的に理解していれば、卑近な例として、補中益気湯合六味丸や補中益気湯合海馬補腎丸などが適応する病態を認識する上でも、極めて有意義な概念と思われるのである。
