●日本で常用される「風痰上擾」の治療方剤『半夏白朮天麻湯』『釣藤散』について
村田漢方堂薬局 村田恭介
半夏白朮天麻湯や釣藤散あるいは導痰湯や滌痰湯が適応する「風痰上擾」は、脾不運湿によって湿聚生痰し、痰濁が少陽三焦を阻滞し膜原を障害して肝風内動を誘発し、一方では脾虚不運によって肝陰を滋補できないために肝陽が遊離して肝風を生じ、少陽三焦を通路として肝風が痰濁を伴って上擾するものである。
脾胃論の半夏白朮天麻湯は、同名の方剤半夏白朮天麻湯(《医学心悟》【組成】 製半夏 陳皮 茯苓 甘草 白朮 天麻)に比べて薬味がかなり多く、日本で常用され、製剤化されたエキス製品も各種販売されている。補気健脾・淡滲利水・化痰熄風の効能があり、脾虚湿困・湿聚生痰・痰濁内阻・肝風内動・風痰上擾の病機に適応する。実際の臨床では、めまい・頭重・悪心・嘔吐のみならず、頑固な浮腫に、あるいは下痢や軟便傾向があり軽度の膵炎や潜在的に膵臓が弱っていると思われる者にも有効である。
釣藤散は日本では特に常用される化痰熄風の方剤であり、平肝清熱・補気健脾の効能を併せ持ち、脾虚肝旺・痰濁上擾・肝陽化風および化火の病機に適応する。但し、風痰による痰濁上擾が顕著であれば半夏白朮天麻湯を、肝陽化風の原因として明らかな肝陰虚が認められれば杞菊地黄丸を、肝陽化火が顕著であれば黄連解毒湯などを併用する必要がある。このような二〜三方剤を併用すべきものに、高血圧症や俗に言うメニエール氏症候群などがあり、脳血管障害の前兆の場合もあるので牛黄(ゴオウ)の併用も考える。血瘀の兆候がわずかでもみられれば、慎重に適量の『生薬製剤二号方』を併用する。
風痰証が遷延すると風痰証が残存したまま痰瘀互結証に発展することが多く、脳血管障害の後遺症によくみられる。それゆえ、エキス剤を利用する場合は適宜ウチダの『生薬製剤二号方』を用い、あるいは牛黄製剤なども併用するとよい。牛黄には強力な熄風清熱および開竅と豁痰の作用もある。
但し、釣藤散証のように肝陽偏亢や肝陽化火の傾向がある場合は、血瘀の徴候がみられても単独で『生薬製剤二号方』を用いてはならず、併用する場合においても過量であってはならない。もしも単独で使用したり併用量が過剰であると肝陽偏亢を助長したり、あるいは肝火を盛んにし、却って逆効果となる場合があるので、杞菊地黄丸などの滋陰剤や黄連解毒湯などを併用するなどして、配合バランスを十分配慮して投与すべきである。
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posted by ヒゲジジイ at 07:18| 山口 ☁|
中医漢方薬学『中医学と漢方医学の融合』
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