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2018年11月05日

『中西医結合への道』第3章:中西医結合への道

中西医結合への道

村田恭介著

 五臓間の整体関係については、五臓の組織構造は連繋して一体化し、機能活動は相互に強調し合っているので、五臓を関連付けて分析し、整体関係に注意してはじめて症状に対する認識を見誤ることなく有効な施治を行うことができる。それゆえ、他臓の疾病に対する脾胃の論治や、脾胃の疾病に対する他臓の論治などのことは、実際の臨床では日常茶飯事である。

 このような五臓の整体関係を重視する中医学は、スイスの言語学者ソシュールを先駆とする「構造論」的な分析方法と見事なほどに一致していると思われる。つまり、言語の様相を体系的にとらえ、各言語間の機能的連関を明らかにして言語の法則を追究する「構造言語学」を主要なモデルとする科学的な分析方法、すなわち「構造主義」を立脚点とする方法は、中国では古代から当然のように行われていたのである。中国の歴代の医家に言わせれば「なにをいまさら」という冷ややかな言葉が発せられるに違いない。

 フランスの高名な精神科医ジャック・ラカンは、ソシュールの言語学をモデルとして、「無意識は言語のように構造化している」という命題を出発点としたが、「生体内の生命活動も言語のように構造化されている」と言えるのである。と言うよりも、これは順序が逆で、もともと「人体の生命活動は構造化されたもの」であるがゆえに、その生命の宿る人間同士の意思疎通の道具である「言語」が構造化されていて当然であり、それゆえ、ラカンは「無意識は言語のように構造化されている」という命題を出発点にすることが出来たのであろう。

 五臓相関の「陰陽五行学説」は構造主義的な科学理論であり、中医学から見た人体の基本構造は「五行相関にもとづく五臓を頂とした五角形」であり、病態認識の基礎理論となる構造法則は「陰陽五行学説」にほかならない。

 この陰陽五行学説にもとづく「中医学理論」こそは、よりハイレベルな構造法則としてよりきめ細かく綿密化されてあらゆる病態に対応できるように発達・発展していく必要がある。それゆえ、ミクロ的な部分で優れた視野を持つ西洋医学の成果を中医学の不足部分を補うべく、いかに取り入れるべきなのか。

 マクロ的では整体観の乏しさから非科学性を指摘されかねない問題を残しながらも、ミクロ的な部分で高度に発達した西洋医学をより有効に活用すべく、中医学に吸収合併させるという大胆な発想も、以上の考察から少しは理解してもらえるのではないかと愚考するものの、これではまだまだ納得して頂けそうにないので、極め付の思想家二名にご登場願うことにしたい。

続きは⇒ (4)ミシェル・フーコーやロラン・バルトが中医学を知っていたなら
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ラベル:中西医結合
posted by ヒゲジジイ at 00:00| 山口 ☀| 中医学と西洋医学『中西医結合への道』 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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