1989年月刊『和漢薬』誌1月号(通刊428号)巻頭論文として掲載された拙論『中医学と漢方医学』(村田恭介著)のほぼ全文をほとんど修正せずに転載。決して古びた内容とは思えない。たまには、応援のクリックお願いします!⇒
平成元年1月、本場中国の漢方、中医学が日本国内に次第に認識され始めた1980年代後半に漢方と漢方薬の業界紙に書いた拙論。当時の漢方界の時代状況の一端を反映しているはずである。
(1)方証相対と弁証論治
中国では「漢方」と言えば日本の伝統医学、すなわち漢方医学のことであり、中国の伝統医学はすべて「中医学」であって、漢方とは言わない。「漢方」という言葉は元来が日本語である。(文献@)
であるから、漢方医学と言えば日本の古方派、後世方派、折衷派を総称したものの様である。尤も昨今は折衷派が大半のように思われる。
漢方医学の特徴を要約すれば方証相対論による処方単位のパターン認識が主体ということであろう。【病態認識】がそのまま【方剤=実際処方】として短絡的に繋がり、その病態認識ですら、方剤の名称を持って来て、何々湯証として認識される。
常に方剤中心の医学と言っても過言ではない。後述するような中医学の中核である「弁証論治」の様に【病態認識】【治法】【方剤】【実際処方】(文献A)と連携される訳ではない。
ところで近年、新たな勢力として現代中国医学、即ち中医学派が台頭しつつあるのは周知の通りである。
この中医学とは、陰陽五行論を基礎概念として広い中国国内の多くの流派、多くの学説を整理し系統的に総括統合し平均化して構築された一大医学体系である。
その特徴は、弁証論治が中核となる。【病態認識】【治法】【方剤】【実際処方】(文献A)と連携され、それぞれの項目において厳密且つ系統的な思考が要求される。
その病態認識はかなり統一された豊富な専門用語によって表現され、系統的分析的に整然と把握される。その後に続く【治法】【方剤】【実際処方】においても同様である。
この中医学の中核をなす弁証論治を多少とも満足に行えるようになるには、中医学特有の哲学理論に基づいた複雑な全体系を系統的に学習しなければならない。
現在の中国においては、菅沼中医師によれば、「中国の中医学院では、カリュキュラムは中医基礎学、中薬学、方剤学の三課程が基礎医学の柱」(文献B)となっていると言われる。
それ等の教科書類の原書、或はそれに類する原書は、今日かなり自由に手に入れることが出来る。但し、これら三課程は最低の基本線であることを忘れてはならない。
文献
(文献@)張瓏英著「臨床中医学概論」自然社発行/緑書房発行
(文献A)田川和光著「漢方エキス剤の中医学的運用」(「中医臨床」誌1988年9月通刊34号)東洋学術出版社発行
(文献B)菅沼栄著「中医方剤学とエキス剤」(「中医臨床」誌1988年9月 通刊34号)東洋学術出版社発行
続きは⇒(2)昭和末期の漢方医学の一般的な学習方法
ラベル:中医学
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