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漢方とは中国から伝来した医術や薬術を指す言葉である。
「中国から伝来した医術や薬術」というのは、中国の伝統医学や薬学のことにほかならず、言うまでもないことであろう。
医師が診断して漢方処方を投与すれば医術であり、薬剤師が薬局店頭などで漢方相談により漢方製剤を販売する行為を薬術ということになろう。
「漢方は日本で成熟した医術である」などと特に強調されたり、日本の伝統医学であるなどと主張されるむきも多いが、この点については大いに異論や問題のあるところである。
むしろ日本に伝わって漢方の本質を損なった点も少なしとしないのである。この点については 日本漢方を堕落させた吉益東洞 日本漢方の将来「中医漢方薬学」の提唱 や 日本漢方の問題点『中医漢方薬学に目覚めるまで』 などを参照されたい。
ところでネット上ではしばしば健康食品類を漢方の健康食品と銘打って販売している向きも多いが、問題なしとしない。
たとえば先年、健康被害が多発したダイエット用食品「天天素」事件などでは「マジンドール」「シブトラミン」等の医薬品成分が含有されていたにも関わらず、漢方と銘打って多くの薬局や健康食品店で販売されていた。
いまだに中国から輸入した健康食品なら何でも「漢方」だと信じている一般人のみならずネット販売業者さん達も多いようだが、根本的な勘違いをされている。
おおよそ漢方薬とはかけ離れたもが配合されたものでも中国から輸入したものなら何でも漢方と銘打たれるのは非常識であろう。
極端な例では上記の天天素のように合成医薬品含有した無承認無許可医薬品であっても中国からの輸入品であれば「漢方」や「漢方薬」とも表現されるネット界の非常識は是正されるべきであろう。
これらは牽強付会であることは明らかだが、無知蒙昧をよいことに得手勝手な拡大解釈には、ちょっと付き合いかねる世界である。
上記のような低次元の話しはこれくらいで終わり、漢方と漢方薬の本質を考えてみたい。
漢方と漢方薬の本質
漢方とは何か? 漢方薬とはどんなものか?
その本質的な所を的確に表現することは容易ではありませんが、おおよそのところは以下の通りです。
漢方を含めた東洋医学においては、どのような病気も究極的には五臓六腑のアンバランスによって生じるものと捉えています。
一人の身体の中で起こる病気は、その人の生まれ持った体質的な素因やストレス状況、地域的な生活環境の諸条件、あるいは食生活環境の諸条件などとも大いに関係があり、現在出ている病気の症状だけでなく、過去の病歴やその他の環境的な諸条件なども配慮し、また一見無関係に思えるような症状も参考にします。
要するに、現在の病気の解決の為には、種々の要因を総合的に分析・判断することによってはじめて、その人の体質と病状に合った漢方薬の組合せ(配合)ができるというわけです。
やや専門的に述べれば、
東洋医学における疾病観は、五臓間における気・血・津液の生化と輸泄(生成・輸布・排泄)の連係に異常が発生し、これらの基礎物質の生化と輸泄に過不足が生じたときが病態とされる。
この理由から、五臓それぞれの生理機能の特性と五臓六腑に共通する「通」という性質にもとづき、病機(病理機序)と治法を分析する。
つまり、
1.病因・病位・病性の三者を総合的に解明し、
2.気・血・津液の昇降出入と盈虧通滞(量的な過不足と流通の過不足)の状況を捉え、
3.定位・定性・定量の三方面における病変の本質を把握する。
これらの分析結果に基づき、
1.病性の寒熱に対応した薬物を考慮しつつ、
2.発病原因を除去し、
3.臓腑の機能を調整し、
4.気血津精の疏通や補充を行う。
以上が真の漢方と漢方薬の姿です。
日本漢方の悲しい現実
但し、これは中国漢方すなわち中医学の本質であり、この本来あるべき基礎理論が日本漢方ではほとんど取り入れられていないのが現実である。
吉益南涯の気血水説と傷寒論医学の六経弁証はあっても臓腑弁証や経絡理論を取り入れないのが日本漢方、とりわけ日本古方派の困った現実がある。
何が困るかと言うと、日本古方派が日本の伝統医学の主流、すなわち日本漢方であるとされることに対して、同じ日本人として実に困るわけである。
我が愛すべき日本国のこの恥ずかしい現実を如何にせむ。

ラベル:漢方
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