八味丸(基本方剤の中医学考察)たまには、応援のクリックお願いします!⇒
【原方名】八味地黄丸(《金匱要略》)
【処方構成】地黄 山薬 山茱萸 沢瀉 茯苓 牡丹皮 桂枝 附子
【方剤の特徴】腎陽を温補するのを効能とすることから日本国内でも、村田恭介の命名によりマツウラさんから錠剤のエキスで「腎陽温補丸」だったか「腎陽温補湯」だったかの愛称名で販売されたこともあるが、現在は廃番となり、現在は「腎陽温補散」の名で散剤として復活している。
【主治】腎陽不足による足腰のだるさ・下半身の冷え・排尿困難あるいは排尿過多・脉は虚弱、および痰飲・脚気・水腫・消渇など。
【方意】 腎陽が不足すると水邪を生じるので、腎陽を温補して腎陽を旺盛にする必要がある。
腎陽が盛んになると気化機能が回復して水液失調による種々の症候はおのずと回復する。
ただし、陰陽学説では、陰陽は対立しつつも相互に依存し、相互に転化するものとされ、「陰は陽から生じ、陽は陰から生ず」「孤り陰は生ぜず、独り陽は生ぜず」ということであり、張景岳のいう「よく陽を補うものは必ず陰中に陽を求め、陽は陰の助けを得るをもってすなわち生化は窮まりなし」との観点から本方を理解すべきである。
したがって、桂枝・附子は温陽益火し、腎陽が盛んになると気化機能が回復するものの、壮陽益火するだけでは腎陰を損傷しやすいばかりでなく腎陽のよるべきところを喪失してしまうので、腎陽を温める時には益陰する必要がある。
このため、滋陰補腎の地黄、肝腎を補い精気を固める山茱萸、培脾固腎の山薬などで益陰摂陽して、陰中に陽を求める。
また、補陽により肝腎の邪火が亢盛するのを防止するために牡丹皮を加えて伏火を清する。
気化機能の衰えによる水液失調に対し茯苓・沢瀉を用いて湿邪を滲利し水道を通調する。
以上八味の配合により、補中に瀉があり、瀉によって補を助けて益陰助陽し、温性にして乾燥させず、腎陽を奮い起たせて気化機能を助け、温陽補腎の効を発揮する。
【病機】 腎陽不足
【治法】 温補腎陽
【応用】 腎陽不足による各種疾患に対して極めて応用範囲が広い。
〔参考させて頂いた文献〕
●「中医治法与方剤」(人民衛生出版)
●「中医病機治法学」(四川科技出版)

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