痰証を抱える実際の患者さんにおいては、痰証が遷延して痰瘀互結証に発展していることが多いので注意が必要である。痰滞と血瘀が互結した状況では、袪痰の方剤類に活血化瘀薬を加えて対応すべきであるが、エキス製剤を利用する場合は袪痰剤に活血化瘀剤を併用する。最近では、ウチダ和漢薬から『生薬製剤二号方』という名で製品化された活血化瘀剤があり、血瘀が併存するあらゆる病態に「併用方剤」として極めて有用である。それゆえ、あらゆるタイプの痰瘀互結証においても、ウチダの『生薬製剤二号方』を、適切な袪痰剤に加えて対処することができる。
たとえば、66歳の男性で脳梗塞後の後遺症。主訴の後頭部の頭重・頭のふらつき感などとともに、不整脈・舌苔は微黄膩・舌下脈絡の怒張・血圧170〜117などの症候を伴うものに対し、釣藤散エキス散・ウチダの生薬製剤二号方・杞菊地黄丸の三方剤併用で、主訴および高血圧なども改善。
59歳の男性で、主訴の頭のふらつき・前頭部の頭痛・息切れなどとともに、寒がる・舌質は紫がかって暗晦・舌苔は白厚膩などの症候を伴うものに対し、《脾胃論》の半夏白朮天麻湯エキス顆粒の投与で主訴に対して即効性が得られたが、しばらくすると効力が低下。そこで、ウチダの生薬製剤二号方の二分の一量を併用することで効力が安定した。
なお、ウチダの『生薬製剤二号方』の成分は、丹参・川芎・紅花・芍薬・木香・香附子の六味であり、二十数年前に中国で開発され冠状動脈性心疾患や脳梗塞などに顕著な効能を持つ『冠心二号方』に極めて類似しており、方意は全く同様と考えてよい。また、十数年前に業界内ではユニークな健康食品として一世を風靡しながらも(丹参が医薬品に昇格したために)消滅の憂き目にあった『霊丹参』(霊芝+丹参)が、形と内容を変え、正式な医薬品として再登場したものと言えなくもない。
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