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2019年05月15日

『アトピー性皮膚炎の漢方治療』を読んで

 書籍『アトピー性皮膚炎の漢方治療』は、1996年の発行で、B5判 216頁 全24篇 55症例 カラー写真多数 定価:3,570円

以下は、1996年9月号の『中医臨床』誌掲載された読後感想文である。
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アトピー性皮膚炎の漢方治療』を読んで

           村田漢方堂薬局 薬剤師 村田恭介

 周知のように,今年(1996年)の5月に中医臨床シリーズの第1巻目として,本誌の出版元である東洋学術出版社から『アトピー性皮膚炎の漢方治療』が出版された。

 アトピー性皮膚炎は生命を脅かす疾患ではないが,激烈な皮膚掻痒感を主症状として日常生活に大きな支障を来す。ステロイド類の使用で一時的にお茶は濁せても,現代西洋医学では決定的な治療方法がなく,難治性の現代病として社会問題になっている。このため,第三の医学とも言うべき斬新な治療方法を謳う各種出版物が百花繚乱の今日ではあるが,現代東洋医学における中医学の立場から,このようなアトピー専門の書籍がはじめて出版されたことは,まことに時宜にかなっていよう。

 日本漢方の立場から書かれた専門書は過去に何冊か出版されているが,本書は主として「構造主義科学」の範疇に属する中医学の立場である。それゆえ,アトピー性皮膚炎の病因・病理・治療方法などが理詰めで分析・検討されており,構造主義科学としての医学理論が現実の臨床に,どのように活用されるかを示す「お手本」としても貴重である。

 ここで言う「構造」とは「物事を成り立たせている各要素の機能的な関連。または,そのようにして成り立たせているものの全体」(小学館『大辞泉』)である。それゆえ,当然のことながら生体内の生命活動は構造化されている訳であるが,中医学という構造主義科学理論においては,人体の生命活動を「五行相関にもとづく五臓を頂とした五角形」が基本構造であると捉えている。

 ところで,五臓を頂とした五角形に歪みが生じたときが病態であるが,病態分析の基礎理論となる構造法則の原理は,陰陽五行学説である。陰陽五行学説にもとづく中医基礎理論は,臨床の現実に即して展開されるので,原理的に新たな理論の充実を図ることが可能である。それゆえ,治療の成否は中医基礎理論の知識を実際の臨床にどのように活用し展開させるかという一事に関っている。

 本書『アトピー性皮膚炎の漢方治療』では,現代の新しい難病である皮膚炎に対し,二十数名の臨床家によって様々な展開が行われている訳であるが,構造主義科学としての中医学の実践による成果が遺憾なく発揮されている。  さて,そこで問題となるのが中医学治療後の有効率・根治率や再発率である。これには専門的な統計処理が必要であり,個人個人の技術的な優劣の問題なども絡むので,難題である。

 唐突にも,このような問題を提示するには理由がある。癌治療に対する問題提議として昨今話題となっている慶応大学医学部放射線科講師の近藤誠氏による『患者よ,がんと闘うな』『それでもがん検診受けますか』『がん治療「常識」のウソ』『がんは切れば治るのか』などの衝撃的な内容の書籍に,漢方薬は有効性がなんら証明されていない非証明医療の一つであり云々と,民間療法と同列に扱い,けんもほろろである。小柴胡湯の副作用問題が勃発している今日だけに,なおさら近藤氏の漢方批判は鋭くなるに違いない。

 月刊『文藝春秋』の8月号には東京大学の外科出身の医師が,近藤理論をサポートするような論文が掲載されており,今後は次第に日本の癌治療に対する方法が大きく改変されざるを得ないだろう。現実に我々漢方専門の薬局においても,癌治療における抗ガン剤や拡大手術による弊害,放射線治療による急死など,近藤氏が訴え続けておられることと全く一致する現象を数多く見聞している。(体力低下により手術や抗ガン剤投与が見送られていた患者さんに,我々の漢方薬で気力・体力・食欲を充実せしめた途端,手術や抗ガン剤が可能となったとの主治医の判断から,いかに多くの命が縮められたことか!)

 このように,多くの点で近藤理論は説得力を持っているように思われるが,一方では我々の所で癌患者に漢方薬を用い,延命効果や苦痛除去など,クオリティー・オブ・ライフの確保に役立てている例は数知れず,根治してしまったと思われる例さえあるが,近藤氏の漢方薬に対する評価は極めて冷淡である。

 ところで,多くの点で説得力を持っている近藤理論にも,例外はないのだろうか。たとえば,メラノーマ(悪性黒色腫)に対しても早期発見・早期治療の重要性を否定し,「がんもどき」理論の仮説を信じてのんびり構えていてよいものかどうか? メラノーマの専門家によれば,本病は早期発見と早期の広範囲切除以外に根治の方法は無いに等しく,抗ガン剤のみならず放射線さえも有効性が乏しいと言われているが,近藤理論をそのまま適用してよいのだろうか? もしかすると,人心を迷わす危険思想ではないのか? また「がん検診,百害あって一利なし」の主張は,すべての悪性腫瘍に通用するのだろうか?

 とは言え,多くの点で説得力のある近藤氏の主張に,医学界における「黙殺」が広く蔓延しているだけに,近藤理論はすべて正解であるとするマスコミの風潮だけが目立つように感じられる。このような影響力の大きい人物による漢方薬批判に「黙殺」が続けば続くほど,小柴胡湯問題と相俟って,抗ガン剤・拡大手術に対する批判の増大とともに,漢方排斥運動さえ生じ兼ねないのではないだろうか。

 近藤氏等に中医学が非科学的に見えるとすれば,「科学」の意味の何たるかをご存じないから生じる誤解であろう。科学は仮説に基づく理論大系化の試みであり,現実世界に十分有効な理論であれば,一つの立派な科学理論として成立するのである。中医学は構造主義科学理論であり,構造化された生体内を「五行相関にもとづく五臓を頂とした五角形」として捉えることから出発し,臨床に直結した医学理論として常に生体内に共通した普遍性の探究を継続し,基礎理論の確認と補完を図りつつ,最終目的である疾病状態における個体差(特殊性)の認識と治療へとフィードバックさせる医学である。

 それゆえ,近年盛んに言われている「漢方の科学化」という用語法は完全に間違っており,正しくは「漢方の西洋医学化」と表現すべきである。上述のように中医学は既に科学であるのに,言語矛盾も甚だしい。中医学は科学であることをもっと強く主張すべきである。中医学は紛れもなく構造主義科学理論である。癌治療の新しい時代を切り開く近藤氏等のみならず,現在のような医療変革期においては,医学・薬学の専門家に対し,広く中医学や漢方薬の有用性を理解せしめることは急務である。中医学こそは,立派な一つの構造主義科学であるのに,いつまでも日陰に甘んじている謂れはない。

 生体自身は有機的に構造化されているとともに,あらゆる自然環境および人工的な環境に影響されるとする中医学特有の「整体観」こそは構造主義科学理論の一部にほかならないが,このような構造論にもとづいた科学的な視点が西洋医学にどれほどあると言うのだろうか。西洋医学は構造論的な視覚が,中医学よりも遥かに劣っているがゆえに,多くの難治性疾患に対して無力なのではないか!

 構造主義科学理論としての卓越性を理解出来ず,漢方薬が非証明医療であり民間療法と同列であるとする近藤氏の非難を覆すには,中医学専門に活躍されている多くの医師のカルテによって追跡調査を行い,有効率や根治率・再発率などの統計処理を行えば十分なことのように思われる。言うは安く行うのに様々な困難が伴うだろうが,各中医学研究会それぞれで行い,東洋医学会などで発表して頂くべきではないだろうか。

 世紀末の日本は,癌治療における近藤理論や漢方薬の小柴胡湯問題,のみならず薬害エイズや安楽死の問題など,大きな社会問題として大混乱を来たし兼ねない。

 このような時代にあって「中医臨床シリーズ」に対する期待は大きい。既に『アトピー性皮膚炎に対する漢方治療』が出版され,中医学の卓越性を世に訴えることが出来たと思われるが,癌治療を含めた様々な難治性疾患の治療分野でもアピール出来る出版を,大いに御期待申し上げる次第である。

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posted by ヒゲジジイ at 15:14| 山口 ☀| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月27日

『脾肺病としてのアトピー性皮膚炎』という過去の拙論

脾肺病としてのアトピー性皮膚炎
 
東洋学術出版社発行の『アトピー性皮膚炎の漢方治療』に掲載。
 1996年の発行で、B5判 216頁 全24篇 55症例 カラー写真多数 定価:3,570円 ということだが、現在は中古でしか手に入らないかもしれない。
           村田漢方堂薬局 薬剤師 村田恭介


   ●はじめに

 アトピー性皮膚炎は,現象的には皮膚と皮下組織の病変であり,中医学的には肺に属する「皮毛」と脾に属する「肌肉」の病変であるから,アトピー性皮膚炎は肺脾病と考えることが出来る。それゆえ,大気汚染の状況や空調設備の環境および食生活の習慣や環境などと,密接な関係がある。

 ところで,『素問』咳論に「五臓六腑はみな人をして咳せしむ。独り肺のみにあらざるなり」と述べられているように,五臓の機能が失調すると少陽三焦を運行する気機の逆乱を誘発し,いずれも肺の宣降を失調させて咳嗽が出現し得ることを指摘しているが,アトピー性皮膚炎も同様に,五臓の病変が肺脾に波及すると,いずれもアトピー性皮膚炎を誘発し得るのである。

 昨今のアトピー性皮膚炎には様々なタイプがあり,代表的な弁証分型を提示することは出来ても,すべてを包括することは不可能な状況である。肺脾の疾患であっても,五臓の病変はいずれも本病を誘発し得るだけに,病機は複雑多岐である。とは言え,これは何もアトピー性皮膚炎に限ったことではなく,大局的に見れば他の疾病と何ら異なることのない普遍的な共通性である。それゆえ,アトピー性皮膚炎だからと言って特別視する必要はなく,肺脾病との認識に立脚して中医学理論に基づく弁証論治を忠実に行うという基本的な営為こそが,最も有効な治療方法と言える筈である。

 人体の生命活動は「五行相関に基づく五臓を項とした五角形」が基本構造であり,病機分析(病態認識)の基礎理論となる構造法則の原理は,陰陽五行学説である。陰陽五行学説という原理に基づく中医学理論は,よりハイレベルな構造法則として常に発展していく必要があるが,差し当たりは現段階における中医学理論に基づき,五臓を項とする五角形のひずみを矯正することが,疾病治療の基本原則となる。

 つまり,西都中医学院の陳潮祖教授が『中医病機治法学』(四川科学技術出版社発行)で述べられているように,五臓間における気・血・津液の生化と輸泄(生成・輸布・排泄)の連係に異常が発生し,これらの基礎物質の生化と輸泄に過不足が生じたときが病態であるから,五臓それぞれの生理機能の特性と五臓六腑に共通する「通」という性質に基づき,病機と治法を分析して施治を行うのである。

@病因・病位・病性の三者を総合的に解明し,
A気・血・津液の昇降出入と盈虚通滞の状況を捉え,
B定位・定性・定量の三方面における病変の本質を把握するというわけである。

 治療方法については、これらの病機分析に基づき,病性の寒熱に対応した薬物を考慮しつつ,

@発病原因を除去し,A臓腑の機能を調整し,B気血津精の疏通や補充を行うのである。

 治療の成否は,中医基礎理論の知識を実際の臨床にどのように活用し,応用出来るかという一事に関わっているが,実際の臨床においては「現症の病機」の把握に大きな間違いがなければ,アトピー性皮膚炎と言えども,既製のエキス剤の代用によっても,一定の成果を上げ得るのである。
 

      ●症例


 (1)当時13歳の女子。身長155cm,体重45Kg。初回,平成5年8月6日。

 [主 訴] アトピー性皮膚炎。
 
[原病歴] 3歳頃に発症し,近隣の皮膚科で加療。主としてステロイド系の軟膏を断続的に使用し続け,軽快と増悪を繰り返していたが,マスコミによるステロイド軟膏の副作用情報に両親が恐怖感を抱き,平成5年5月下旬よりステロイド軟膏を含めて,病院治療をすべて中止する。しばらくして顔面や首回りと四肢の屈曲部を中心に紅皮症様となり,激しい痒みを伴い,掻破して出血する。人に勧められてよもぎ風呂を使用すると,2〜3割程度の緩解があったが,それ以上は良くならない。  

[現 症] 顔面の紅潮が著しく,首と四肢の屈曲部・足の裏・手掌に掻破痕があるが出血以外には滲出液はみられず,すべての患部に白屑が伴っている。少食で疲れやすく寒がり,夜間は夏でも蒲団に頭までもぐり込んで寝る。痒みは風呂上がりに最も激しい。 
[舌 象] 舌の大きさは普通で中心に1本の溝がある。舌質は淡紅・舌尖は紅で点刺が顕著・舌苔は微黄膩・舌下脈絡が青黒く怒張。  

[現症の病機] 脾肺の気虚とともに脾虚生湿と心火亢盛を伴ない,火熱が湿邪と合体して湿熱が生じ,表衛の機能低下による悪風も伴っている。  

[治 法] 補気健脾・燥湿瀉火
 
[処 方] 補中益気湯・黄連解毒湯の各エキス剤(日本で常用される煎薬換算の半量を分3)。  

[経 過] 服用開始の初日から即効し,わずか4日間で,奇跡的に全身の皮膚炎の殆どが消滅した。ところが,5日目から次第に効力が低下し,20日後の状況は足の裏・手掌・首回りが乾燥して白屑が強い。顔面の紅潮や全身の掻痒は殆ど消失したが,首は乾燥のために痛い。

 また,全身の所々で毛穴を中心にした鳥肌が立ち,項背部が凝って寒い。相変わらず就寝時は寒がって蒲団に頭からもぐり込んでおり,足腿の内側部分は鳥肌状の赤い発疹が顕著に出現している。
 以上により,表衛のさらなる機能低下により,風寒束表が誘発されたと考えて「葛根湯」,少陽三焦を通じて体内の津液分布の偏在を調整する「猪苓湯」の二方剤を追加し,それぞれ煎薬換算の半量を分3で加える。

 9月中旬,全体的に軽快しているが,風呂上がりに足の裏が紫色になり,気味が悪いという。黄連解毒湯による氷伏を恐れ,本剤のみ服用量を半分に減す。これで配合バランスがほどよく調整され,多少の波を打ちながらも比較的順調に軽快し,翌年の平成6年3月にはほぼ消失し,念のため10月まで服用して,治療を徹底させた。

 なお,平成6年の1月には黄連解毒湯のみ一時的に中止してもらったたことがあったが,やはり本剤がないと掻痒感が出現してしまうので,結局は少量の配合が必要であった。

 [考 察] 筆者自身は,アトピー性皮膚炎に葛根湯を用いたのは初めての経験であった。表衛の機能低下の上に心火旺盛という状況に対する黄連解毒湯の配合比率は微妙である。配合比率のまずさから風寒束表を誘発する絶好の条件を与えてしまった可能性も考えられる。結果的には黄連解毒湯の配合量を他方剤の2分の1に減量することでバランスが取れた。

 以前,当時14才の愚息の流感による高熱に対し,銀翹散製剤と黄連解毒湯で即効的に治癒させたことがあるが,治癒後もだらだらと続服させていたら,夜間尿の回数が急増して困ったことがある。黄連解毒湯を中止し,腎陽を強力に温補する海馬補腎丸を飲ませて治癒させたが,黄連解毒湯などの清熱瀉火薬を連用する場合は,衛気の来源である腎陽を損傷しないように細心の注意が必要である。

 『霊枢』営衛生会篇に「衛は下焦より出ず」とあるように,衛気は腎から生じる元気がもとになっており,腎陽の蒸騰気化を通じて水穀の精微から化生し,肺の宣発によって全身に散布されるので,衛気が正常に機能するには,@腎精が充足し,A脾が管轄する水穀の精微が充足し,B肺の宣発機能が正常に働く必要がある。

 本例では,心火に対する黄連解毒湯を少量併用しつつ,肺脾の虚損に対する補中益気湯,肺気の宣発を促進する葛根湯,および腎陽の温補も兼ねる葛根湯中の桂皮が合理的に働いて表衛の機能を正常化させ,さらに桂皮は黄連解毒湯による氷伏や腎陽の損傷を防止している。猪苓湯は肺・脾・腎・肝四臓の補益とともに滋陰利水の効能をもつので,少陽三焦を通じて皮毛と肌肉間の膜腠区域の水分代謝の偏在を調節する効能があり,あらゆるタイプのアトピー性皮膚炎に応用が可能である。以上の四方剤によってバランスのとれた治癒力を発揮したものと思われる。

 本例のアトピー性皮膚炎は,心火と脾虚生湿による湿邪の一部が互結して湿熱を生じ,湿熱が少陽三焦を通路として表衛の機能低下に乗じて,皮毛と肌肉間の膜腠区域を擾乱したものと認識している。



 (2)当時18歳の看護婦さん。初回,平成6年5月7日。

 [主 訴] アトピー性皮膚炎。

 [原病歴] 小児の頃から本病の体質傾向があったが,平成5年になって顔面と手足に顕著な増悪が見られ,10月から当時まだ就学中の付属病院にて加療。ベタメサゾンとビタミン剤のD・M2種類の内服薬とともに,外用薬としてメサデルム軟膏が出され,指示を守り治癒を期待したが,軽快と増悪を繰返し,結局は治癒の傾向が一向に見られないので,母親に連れられて来局。

 [現 症] 掻痒感が強く白屑を伴って顔面の紅潮が著しい。両手には強い掻痒感を伴う水疱があり,掻きむしると透明な滲湿液が流れるが,皮膚表面は乾燥してひび割れと白屑を伴っている。軽度の鼻炎傾向があり,透明な鼻汁が出やすい。

 [舌 象] 舌の大きさは普通で舌質は淡紅・舌尖は紅で紅点が顕著・舌苔は白・舌下脈絡が青黒く怒張。

 [現症の病機] 心火熾盛とともに湿熱毒邪が皮毛と肌肉の間隙である膜腠部分で壅滞した状況である。

 [治 法] 瀉火解毒・清熱化湿

 [処 方] 黄連解毒湯・猪苓湯の各エキス剤(日本で常用される煎薬換算の半量を分3)。

 [経 過] 順調に経過し,漢方薬を使用後は病院から出されていた内用剤・外用剤ともにすべて中止したが,心配されたリバウンドも全くない。7月6日の報告では,直射日光に浴びる機会が多かったのが影響したのか,瞼に痒みを伴う発疹が出没。また,手の皮が繰返し剥がれる。同方を持続し,7月20日の時点では,上記の症状はほぼ消退した。8月6日の報告では手の爪と,爪の根本に異変が生じ,カンジタ様の病変が出現。看護婦さんの仕事上不可欠な消毒液の影響が考えられる。上記方剤に十味敗毒湯エキス剤(煎薬換算の半量)を追加。平成7年2月一杯まで真面目に服用し,アトピーのみならずカンジタ様の病変も消失して廃薬。

 [考 察] アトピー性皮膚炎を誘発した根本的な病因・病機を深く追究しなくても,現時点の一連の症候に基づく「現症の病機」さえ把握出来れば,治法と方剤がおのずと定まるので,充分に治療効果が出せることを証明した典型的な症例である。



 (3)当時14歳の女子中学生。身長161cm,体重51Kg。初回,平成5年10月6日。

 [主 訴] アトピー性皮膚炎。

 [原病歴] 小児の頃から本病の体質傾向があったが,平成4年にケーキ屋さんでアルバイトする姉が,毎日の売れ残りを沢山持って帰る日々が続いたお陰で,ケーキ漬け天国の期間が数ヶ月続いていた。ところが11月になって突然,顔面・四肢の屈曲部に激しい発赤・腫脹・掻痒感が発生。このため,一般の皮膚科医院に通院治療していたが,ステロイド剤による副作用のマスコミ報道で恐怖心を煽られ,西洋医学による治療を中止し,漢方薬を求めて母親と来局。皮膚科の検査では,IgEに「家ダニ」と「鶏卵」に陽性が出ていた。

 [現 症] 顔面の紅潮と腫脹が顕著で白屑を伴うだけでなく,所々に掻きむしって生じた滲湿液が黄色のかさぶたを形成している。四肢の屈曲部も同様に,掻きむしって血液を伴った滲湿液が出てかさぶたを形成している。首や腹部や背部にも見られ,殆ど全身に皮膚炎が蔓延している。慢性的な鼻閉・希薄透明な鼻汁・くしゃみなどもあり,皮膚炎のみならず鼻炎症状も顕著。  大便は4〜5日に1回。体力がなく寝るのが大好きで,学校から帰ると寝てばかりいる。皮膚炎が増悪して以来,学校をさぼりがちである。寝汗をよくかき,真冬でも薄着であるが,足が冷える。但し,寝汗をかくような時には,逆に足が火照る。生理の量が多い。

 [舌 象] 舌形は嬌嫩・舌質は淡紅で舌先が鮮明な紅色を呈している。中央部より舌根部にかけて微黄膩苔があり,その他は無苔。

 [現症の病機] 肺脾の気陰両虚の上に,脾虚生湿と心火・肺熱を伴い,このために痰(湿)熱が生じて皮毛と肌肉が接する膜腠で壅滞している。

 [治 法] 気陰双補・清熱化痰(湿)

 [処 方] 補中益気湯エキス剤(日本で常用される煎薬換算の全量を分3)・辛夷清肺湯と猪苓湯の各エキス剤(煎薬換算の半量を分3)・適量の大黄の錠剤。

 [経 過] かなり即効があり,皮膚炎・鼻炎症状ともに急速に消退。リバウンドが心配されたが,極めて順調に経過し,年内には殆ど無症状に近い状態となる。平成6年の4月一杯まで連用して,再発の徴候が見られないので,廃薬。

 [考 察] もしも期待する効果が発揮出来ない場合は,上記の方剤に参苓白朮散の半量を加えて少々脾陰虚に重点を移し,補中益気湯は半量に減量する予定であったが,結果的にはその必要もなかった。

 なお,辛夷清肺湯は日本漢方においては鼻疾患専門の方剤とされているが,中医学的には肺陰虚と肺熱が同時に介在する各種疾患に応用出来る便利な方剤である。アトピー性皮膚炎や気管支炎・気管支喘息のみならず,降圧剤の副作用による咽喉炎や気管支炎などにも応用する機会が非常に多い。



 (4)当時23歳の女性。初回,平成5年5月6日。

 [主 訴] アトピー性皮膚炎。

 [原病歴] 小学生の頃から本病の体質傾向があった。ここ数年来,両手に主婦湿疹様の皮膚病があり,折々に皮膚科にかかってステロイド軟膏をもらって治癒と再発を繰り返していた。四年制大学を卒業したものの就職浪人が決定して以来,アトピー性皮膚炎が全身に次第に発症しつつあったが,友人に勧められたベビー石鹸を初めて使用し,その晩に父が持って帰った握り鮨を大量に食した翌日から激化。顔面・四肢の屈曲部のみならず両腕全体が,激しい掻痒感を伴って発赤・腫脹・乾燥・落屑が出現。右耳周囲の掻痒感は特に強烈で耳切れも併発。マスコミ情報の影響で,ステロイド軟膏の使用に不安を覚え,漢方薬を求めて母親と来局。

 [現 症] 上記の症状の他,両手首から腕にかけて,暗褐色の苔癬化した色素沈着が顕著。手の指や掌に痒みの強い水疱が多数発生し,掻きむしると透明な滲湿液を伴って,ボロボロと表皮が繰返し剥がれる。顔面や両腕・腹部などに掻きむしった血痂と苔癬化した個所が無数にあり,とりわけ腹部には腕と同様に苔癬化した色素沈着の顕著な部分が広い。

 [舌 象] 舌は痩薄で横皺の裂紋が多く,舌質は紅絳・舌苔は薄白で乾燥し,舌根部に苔が解離した暗紅色の無苔部分がくっきりと目立つ。また,舌下脈絡が青黒く怒張。

 [現症の病機] 陰血虚損の体質である上に,辛辣厚味の多食による胃熱によって胃陰を損傷し,母病が子に及んで肺熱と肺陰虚を併発し,脾不運湿による湿と熱が互結して湿熱を生じて皮毛と肌肉が接する膜腠で壅滞している。

 [治 法] 滋陰・清熱・化湿を行った後に補血活血も併用する。

 [処 方] 辛夷清肺湯(全量)・三物黄芩湯・(半量)猪苓湯(半量)の3方剤の併用。後に温経湯(全量)も追加。

 [経 過] 手と色素沈着のある両腕と腹部は目立った効果は認められないが,発赤・腫脹・落屑が併発している部分はすべて順調に軽快し,数ヶ月後に顔面の紅潮がほぼ完全に消退したところで,温経湯を追加。これによって,次第に色素沈着が顕著な両腕と腹部の苔癬化していた部分が消退し始め,平成7年6月まで上記の4方剤を併用。色素沈着がほぼ消退したので,以後は辛夷清肺湯と猪苓湯の2方剤のみ,予防と体質改善の徹底を期待して現在も続服中。なお,舌根部の苔の解離部分は完全に消滅している。

 [考 察] 平成8年2月現在も,母親の希望で上記の2方剤のみを継続しているが,理想的には適量の温経湯も併用すべきであろう。引き続き観察中であるが,今のところ再発は見られない。


  ●おわりに

 アトピー性皮膚炎は,現在大きな社会的問題となっているが,中医学的には基本通りの弁証論治を正確に行えば,かなりな成果が得られる。既に述べたように,治療の成否は中医基礎理論の知識を実際の臨床にどのように活用し,応用出来るかという一事に関わっている。

 前掲の症例は,初期から弁証論治が比較的正確に行えたものばかりを掲載させて頂いたが,実際の臨床では,初回から期待するような治療効果が出せず,長い間,病人さんともども難行苦行を強いられたことも何度か経験している。このような場合でも,軽快後の結果から考察すると,結局は不正確な弁証が原因であり,正確な弁証がありさえすれば,比較的スムーズに軽快・治癒に向かわせることが出来た筈のものであった。

 根本的な病因・病機をそれほど深く追究しなくとも,現時点における一連の症候に基づいた「現症の病機」さえ把握出来れば,おのずと治法と方剤が確定されるので,既製のエキス剤の代用によっても,充分に一定の効果を上げることは可能である。
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posted by ヒゲジジイ at 00:01| 山口 ☁| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月11日

妊娠中のアトピーのご相談

2009年7月12日のボクチン(5歳)
2009年7月12日のボクチン(5歳) posted by (C)ボクチンの母

妊娠中のアトピーのご相談

ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:20〜29歳の女性
【 地 域 】:中国地方
【 お問い合せ内容 】:村田先生こんにちは。
いつもブログの更新を楽しみにしています。

 アトピー体質で悩んでおり、2人目の妊娠をきっかけに悪化のたびに少しずつ使っていたステロイドを完全にやめて、漢方で体質から改善したいと考えております。

 ステロイド歴は7年ほどで、最初は夏に肘の内側だけに使用していましたが、徐々に首や脇などにも湿疹が出来、ひどい時には顔にも広がり、全身が乾燥するようになりました。

 毎年特に春から夏にかけて悪化するタイプで、あせもも併発しているように思います。

 この7年の間に不摂生やストレスが原因で激しく悪化したことも数回あり、普段はみられない浸出液もありました。その際には抗アレルギー剤の内服と、強いステロイドを1カ月で15グラム程使っていました。反対にほとんどアトピーが気にならず、保湿のみでステロイドから遠ざかっていた時期もありました。

 昨年は長年少しずつ使っていたロコイドの副作用か、顔に酒さ様皮膚炎を発症し、脱ステロイドと煎じ薬とケイガイレンギョウトウで1、2週間程プツプツと赤く腫れるリバウンドはあったものの、1カ月程度できれいに治りました。

 それから一年ほど完全にステロイドはやめていたのですが、この春先に首やフェイスラインに湿疹が出来、脱ステロイドをした病院の医師の元でステロイドを再開しました。それから悪化すると少しずつステロイドを使ってしまっていました。

 今は転居と妊娠を機に、近隣の漢方薬局で購入した五行草茶を一日4包と、ニューザイム輝源という酵素飲料を朝晩20mlずつ飲んでいます。食事も食べ過ぎに気をつけ、お菓子やジュース、油・肉類・卵・乳製品を極力取らないようにはしています。これらで胃腸はすっきりする感じがあるのですが、アトピーへの効果は悪化はないもののイマイチといった感じです。いまは半月経過した所で、費用は半月で1万3千円程です。

 今は肘、膝の内側がザラザラと赤く、脇や首にも湿疹があります。掻いても浸出液はほとんど出ません。手足やお腹は乾燥しており、所々赤くザラザラとしています。搔くのが癖になっているのもあるようです。やはりステロイドを使っていた部分は、特に抑えられていた炎症が噴き出しています。

 そこで質問なのですが、妊娠5カ月の今は、しばらくは漢方薬局の方針で体質改善をしていくのが良いのでしょうか?妊娠中でも漢方でアプローチできるのであれば、●●市在住なので是非そちらに伺いたいと考えております。

 最後になりましたが、長文にお付き合いいただきありがとうございました。梅雨や暑さで過ごしにくい季節ではありますが、ご自愛ください。

2010年7月12日のボクチン(6歳)
2010年7月12日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母

お返事メール:

 妊娠中には、胎児の発育を優先的に考えるべきですので、

>しばらくは漢方薬局の方針で体質改善をしていくのが良い

と思います。

 また、産後は体質がガラっと変化する場合がありますので、産後の体質変化とアトピーの状況に応じて、そのお近くの漢方薬局で引き続き通われるべきかと存じます。

 取り急ぎ、お返事まで。

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2010年7月12日のボクチン(6歳)
2010年7月12日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
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2016年08月28日

アトピー性皮膚炎や酒さなど、男性の方がやや治りにくい傾向があるのは当然の理由がある

2010年8月28日のボクチン(6歳)
2010年8月28日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

 今年だけでも、アトピー性皮膚炎や酒さなど、女性達が新規に遠近様々な地区から多数通って来られているが、いずれの人も多かれ少なかれ、順調に経過して、今年の新規相談者については、「有効率」は百パーセント。

 しかしながら男性は女性達よりも新規相談者が少ないものの、同様に遠近様々なところから来られる割には、一部の人は理屈ばかりが先立って、女性達のように素直な人達ばかりとは限らない。

 そのような男達は、たまにやって来ては、八つ当たりでもするつもりか、逆なでする発言が多過ぎるので、引導を渡さざるを得ない人も出て来る始末。

 それゆえ、男性達よりも女性達の方が、はるかに治りやすいのは当然である。

 一部の男性達は、素直さがあまりにも足らないのである。

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2010年8月28日のボクチン(6歳)
2010年8月28日のボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

 
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2013年02月08日

アトピーは冷えが原因であると断言できるほど単純なものではありません

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_IGP0121 posted by (C)ボクチンの母

 昨年来、アトピーが悪化して遠路はるばる下関までやって来られる人達の中には、病院の保険漢方や自費の漢方薬局などで、アトピーの原因は冷えであるとされ、温熱薬を中心に投与されるののだから、激しく発火して止めはがつかなくなってやって来られる人が目立つ。

 事ほど左様にアトピーの原因を単純化することは出来ない。

 アトピー性皮膚炎というものは、現象的には脾肺病(脾肺病としてのアトピー性皮膚炎)ではあるが、五臓六腑それぞれの寒熱虚実の影響を受けるので、総合的で綿密な弁証論治を必要とする極めて複雑な状況を呈しているケースが多い。

 アトピーの原因は冷えであるなどと、あまりに単純化して漢方薬を投与すると、民間療法と同レベルに堕するように思われる。
 それゆえ、各地の漢方専門薬局や保険漢方を転々として治らず、困り果てて遠路はるばる本州の端までやって来られるケースが増え続けるのであろう。

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_IGP0102 posted by (C)ボクチンの母
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2013年01月10日

湿疹の漢方治療のご相談

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IMGP0582 posted by (C)ボクチンの母

ブログ転載の可否 : ブログへ転載許可
年齢 : 40歳〜49歳 の女性
簡単なご住所 : 関西地方
ご意見やご質問をどうぞ : 9月初めより耳、首、もみ上げ、フェイスラインに痒みの強い湿疹ができました。眉と眉の間から粉が吹き、頬も粉が吹くようになりました。

 皮膚科で脂漏性湿疹と診断され患部全体にロコイドを1週間塗り、塗るのを止めると湿疹がまた復活するの繰り返しです。
 3月に三叉神経痛の手術をして完治しましたがここ1年半ほど便秘で不眠です。

 漢方で湿疹を治すことはできますか。ステロイドでは根本的には治らない感じがします。よろしくお願いします。

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IMGP7566 posted by (C)ボクチンの母

お返事メール: お返事が遅くなりましたが、
>漢方で湿疹を治すことはできますか。
というご質問。

 貴女の体質と症状にしっかりフィット漢方薬をしっかり見つければ十分に可能です。
 そのためには7〜10日毎に通える範囲内で、漢方専門薬局を見つけることが必要です。

 関西の事情はこちらでは不明ですので、電話帳やネットなどで調べてしっかり相談してみて下さい。
 取り急ぎ、お返事まで。

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IMGP0479 posted by (C)ボクチンの母

ラベル:湿疹
posted by ヒゲジジイ at 12:59| 山口 ☁| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月28日

急性湿疹が治らず一ヶ月続いても漢方薬がフィットすれば著効

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DSC07713 posted by (C)ボクチンの母

 アトピー性皮膚炎ならこうもうまくいかないだろうが、一ヶ月前から湿疹が治らないと言って来られた女性の場合では、10日分の茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)を渡しておいたら、薬が切れた頃になってもやって来ないので、この女性の母親の時と同様、治ったらそのまま無音のままかっ、と記憶の彼方に飛んで、ほとんど忘れかけた頃になって、母親やおばあちゃんまで連れてやって来られた。

 一ヶ月は経過していたが、漢方薬が無くなる頃には完全に治っていたが、薬がなくなってしばらくするとまた少しずつ再発して来たのでやって来たということだった。
 というより今回の目的はむしろ長年皮膚病に悩むおばあちゃんの漢方薬をお願いしたいとのことだった。

 ともあれ、急性湿疹だから僅か1処方で著効が出ているが、アトピー性皮膚炎であれば滅多なことではこのような著効は得られない。というより当方に来られるアトピーの人達は年季が入って重症者ばかりだから、そのように感じるのかもしれない。

 といっても、この女性の急性湿疹も、食事やお菓子類や飲酒などの不摂生の問題が直結しているように思われたので、徹底的な食事制限を行ってもらったので、その相乗効果が得られたものと思われる。
 だからいつもならこのようなケースではカルシウム剤も併用してもらうのが通常だが、そのときは説明が面倒で省略してしまった記憶がある(苦笑。

 もしも茵蔯蒿湯1処方で効果が弱ければ、黄連解毒湯などの清熱解毒剤やカルシウム剤も追加する予定であることを予告していたのだが、その必要もなかったのだった。

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DSC07609 posted by (C)ボクチンの母

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2012年06月23日

一ヶ月前から湿疹が治らないと言って来られた女性の場合

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IMGP2591 posted by (C)ボクチンの母

 今年の4〜6月にかけてはアトピーの新人さんがたくさん増えた。
 それほど今年は皮膚病が悪化しやすい年なのかもしれないが、本日は一ヶ月前からの急性湿疹が皮膚科の治療でも治らないという若い女性がやって来た。

 通常なら重症化して何年も治らないアトピー性皮膚炎や慢性湿疹の人達が腰を据えて漢方治療を求めて来られるケースがほとんどだが、急性湿疹が治らないからといって発病後まだ僅か一ヶ月。
 殊勝な心がけだと思っていたら、案の定、二十年前、母親が急性湿疹にかかった折、皮膚科で治らないので当方に訪れ、その時の漢方薬で速治した経験があるのだという。
 一度購入した漢方薬で速効で治りきってしまったので、一度っきりのご縁だったという。

 このようなケースがあるから、病歴が短い疾患では漢方薬も往々にして速効がでるから、一度きりのご縁で、二度と来られないから効いたのやら効かなかったのやら、今の今まで知らなかったことになる。

 当時の相談カードは奥に保存してあるはずだが、いずれ探して確認して起きたいと思っている。

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IMGP2766 posted by (C)ボクチンの母


posted by ヒゲジジイ at 22:35| 山口 | アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月09日

漢方薬で重症アトピーが緩解して数年経つ人からのメール

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    DSC_0365 posted by (C)ボクチンの母

 重症アトピーが当方の漢方薬で1年半で8割以上緩解し、その後は1日1〜2回、再発予防と体質改善を兼ねて、3年半以上のお付き合いとなった人から、補充注文時に頂いたメール。
 暑い日が続いておりますが、お元気ですか?
 漢方薬のお蔭と思うのですが、年々暑さに強くなっている気がします。
 この熱帯夜にも係わらず、クーラーなしで熟睡できております。
 以前はクーラーなしでは寝ることが不可能だったのに・・・。
 汗をかいて痒いということも皆無になっております。


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    DSC_0383 posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 20:10| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

まだ終わらない紫根(シコン)騒動

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    DSC00385 posted by (C)ヒゲジジイ

 遅かれ早かれ衰退する一過性の紫根(シコン)騒動であっても、まだまだ五月蝿くてしょうがない。
 今日になってもまだ問い合わせがある。

 流行に飛びつく軽佻浮薄な連中に入れ替わり立ち代り来られては、厳粛な薬局の雰囲気を損ねるのだった(苦笑。

    ツマグロヒョウモン
    ツマグロヒョウモン posted by (C)ヒゲジジイ
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2010年06月29日

W杯、日本代表が勝つとアトピーが寛解する人達

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    ホオジロ
    ホオジロ posted by (C)ヒゲジジイ

 サッカー日本代表チームが勝つたびに、アトピー性皮膚炎の痒みが激減する人達が何人もいる。
 いずれも若い女性達だから嬉しい。
 
 嘘のような本当の話であるっ!

 アトピーの痒みがいかに精神的な要素が絡んでいるかの証明のようである。
 このまま勝ち進んでくれれば、彼女達のアトピーも完全寛解してしまうかもしれないのだが・・・さて今日のパラグアイ戦では、どのような結果になるか・・・今から私もテレビ観戦ですよっ。

    ホオジロ
   ホオジロ posted by (C)ヒゲジジイ
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素人が作る紫根(シコン)化粧水の危険性

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    DSC_7144 posted by (C)ヒゲジジイ

 連日騒々しい限りだが、素人が作る紫根化粧水は、この梅雨時もあって腐敗し細菌やカビが繁殖する危険性大である。
 そのようなカビや細菌が繁殖してしまった場合、それを顔面に塗布し続けたらどのようになるか?

 アトピー性皮膚炎の人が塗布した場合、トビヒなどが合併しないとも限らないので、クワバラくわばら、である。

 いつも引用していることだが、
 流行は、たいていの場合、それの需要者によって作られないで、それの供給者によって作られる。即ち頭の好い商人たちによって創案され、頭の悪い婦人たちによって需要される。
              ━萩原朔太郎著「虚妄の正義」
 要するに、流行というのは儲けるのが上手な頭のよい商人たちによって草案され、流行に敏感な頭の悪い女性達によって消費される、という意味だが、今回のテレビ番組で煽られた紫根(シコン)狂想曲も例外ではないように思われる。

    DSC_7182
    DSC_7182 posted by (C)ヒゲジジイ
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2010年06月28日

馬鹿げた紫根(シコン)騒動に巻き込まれないためには販売しないに限る

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    ボクチン
    ボクチン posted by (C)ボクチンの母

 テレビの影響で勃発した紫根パニックに巻き込まれないためには、販売しないに限る。

 もともと製剤原料や薬局製剤用および調剤用の原料生薬は、指名されても販売しない方針を貫いて来たのだから、今回の騒動で方針を変えたわけではない。

 うっかり製剤原料を販売して間違った使用方法をされてはかなわない。

 素人が紫根を使って化粧水を作るということは、素人の製造だから黴菌を繁殖させ、とんでもないトラブルが生じないとも限らない。

 今回の日本国中で展開される紫根狂乱劇も高みの見物である(苦笑。

    ボクチン
    ボクチン posted by (C)ボクチンの母
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2010年03月24日

アトピー性皮膚炎の漢方薬は一時的にしか効かないと思い込んでいる人達

    キジバト(ノバト)
    キジバト(ノバト) posted by (C)ヒゲジジイ

 世間ではアトピー性皮膚炎に漢方薬が一時的に即効をみても、継続服用しているにも関わらず再発して落胆する人が多いらしい。

 そういう噂を耳にしているアトピーのお馴染みさんが、かなり信憑性の高い分析をされた。
 きっと村田漢方薬局のように、臨機応変の配合変化を行ってもらわないからではないでしょうか? というのである。さもありなん・・・と言いかけたところで、思い当たる節が多々あった。

 このお馴染みさんとて、初期の一ヶ月間は茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)と猪苓湯で即効的に効果があったにも関わらず、村田漢方堂薬局に来局される数ヶ月前まで無効になっていたステロイド軟膏の塗布を執拗に行っていたツケが突然回ってきて、激しくリバウンドして全身から滲出液が流れ出した。
(病院に通院中にも同じ現象を繰り返していたというのだから、どんな治療をされていたのだろうか?)

 そこで猪苓湯を残して新たな二方剤を追加し、茵蔯蒿湯を中止して急速に寛解に向かい、その後は四季折々に応じた配合変化と生理後と生理前でも配合変化があり、これらの頻繁な微調整のお陰でさしもの超重症のアトピーも一年過ぎる頃には8割近く、二年半かかってようやく9割寛解に漕ぎ着けたのだった。

 初期に茵陳蒿湯と猪苓湯程度で効果が出た途端に無音となる人達、とりわけ医療関係者に多いのだが、彼ら彼女らは効果のある方剤が分かった時点で地元で調達しているに違いないが、初期に効いた方剤だけで最後まで寛解に漕ぎ着けた例は、これまでの経験ではほとんど皆無に近い

 それがあるとしたら軽症者に限られる。長年続いたアトピー性皮膚炎が、単純な二方剤で安定した寛解が得られるはずもないだろう。

 四季折々に変化しやすいアトピー性皮膚炎に対する微調整のコツを御本人自身にも習得してもらうのが当方の流儀であるが、それ以前に、一定の効果があった時点で、早々に無音となる人が多いのも現実である。

 このことのついて、上述のお馴染みさんの推測では、効かなくなりかけた時点で配合の微調整や不足する漢方薬を追加してもらわなければならないのに、そんなことも理解出来ずに、きっと「あ〜、やっぱり漢方薬の効果は一時的だったっ!」と勝手に思い込んで、村田漢方薬局の長時間の漢方指導を貶めていることだろう、というのである。

 さもありなん。

 否、たとえ「しまったっ!」と気が付いても、不義理をしている関係上、ばつが悪くて頭を下げて再来することもできないのだろう。
 いまさら再来して欲しくもないのが本音ではあるがっ(苦笑。

 いずれにせよ、一定レベル以上に悪化したアトピー性皮膚炎が、最初から最後まで同じ方剤だけで寛解できることは殆どあり得ない。

 上述のお馴染みさんでも10種類以上の漢方薬を常備していて、適宜、数種類以上の配合を臨機応変に上手に使いこなすまでになっている。
 そのお陰で超重症だった本病を克服して現在があるのだった。

    キジバト(ノバト)
    キジバト(ノバト) posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 10:01| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アトピーなどで皮膚科を歴訪して治らない人達が何と多いことかっ!

    スモモ
    スモモ posted by (C)ボクチンの母

 今に始まったことではないが、皮膚科に通い詰めて治らず、挙句は各地の皮膚科を歴訪して西洋医学の限界を感じたといって漢方相談に訪れる人は後を絶たない。

 アトピー性皮膚炎はもとより、酒さ(しゅさ)や慢性蕁麻疹などは例年、相談者の多い皮膚病である。

 正しいステロイド治療がなされずに結果的には乱用による弊害からステロイドがまったく効かなくなり、途中から悪化の一途を辿ったという人が目立つ。

 最近もっとも目立つのは、ステロイド乱用の弊害のみならず、医療用漢方薬の間違った投与により、無効なままで悪化しているのに、医師の指示を忠実に守って数年以上続けて、ようやく自費の漢方薬を思い立ったという人達である。

 自費の漢方薬は種類が豊富だから、様々な配合の工夫が出来るので・・・という以前にも、医師の投与されていた漢方薬の中には、まったく理解に苦しむ内容のものが多いのが現実である。

 それらで有効な人は、こちらに来られるはずもないが、それにしてもそのような人達が昨今、ますます目立つのである。

    IMGP3421
    IMGP3421 posted by (C)ボクチンの母
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2009年09月26日

アトピーに寒涼薬過剰投与が行われる一方では温補剤の過剰投与

    逆光のムクドリ
    逆光のムクドリ posted by (C)ヒゲジジイ

 昨今のアトピー性皮膚炎をこじらせてやって来られる人の多くは、朝鮮人参含有の温補剤の過剰投与や、ニンニク療法、半身浴の長風呂や真夏でも靴下を履いて水虫を増殖させるような温め療法により、熱性炎症を全身に蔓延させてやって来られるケースがほとんどである。

 アトピーに限らず、あらゆる疾患の原因が冷えであるという極めて短絡的で幼稚な信仰による結果がこの通りである。

 ところが最近では珍しく石膏剤や温清飲系列の方剤を一年間も病院で投与された挙句に、脾肺腎を大きく損傷して弱り切って来られた人もおられる。

 ここまで来れば却って人参や黄耆の配合が必須となるが、脾肺の機能が回復したところで、本来の体質に戻る可能性が高いので、頃を見計らって補腎剤を加え、熱化しかかったところで適切な清熱剤の適量を加えるなり、臨機応変の配合変化が必要になるだろう。

 一方では、生まれながらに腎陰虚証体質者であるのに、二年間に亘って生脈散を主体にした人参配合製剤を投与され続けた挙句に、ステロイド軟膏さえ効かなくなり、実熱証に激しい虚熱も合体して重症化して来られた人もおられる。

 しかしながら、他の医療機関や漢方専門薬局などで、誤治に誤治を重ねられて最悪に近い状態になっている人ほど、意外に根性があり、決死の覚悟で頑張られるので、中途半端な段階で来られる人よりも経過がよいケースが多いのは不思議である(苦笑。

    逆光のムクドリ
    
逆光のムクドリ posted by (C)ヒゲジジイ
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2009年03月18日

アトピー性皮膚炎に苦しむ人達の多くが食い意地の張った懲りない面々

 ほとほと懲りない連中である。アトピー性皮膚炎患者さんには肥満体の人は少ないのに、見かけによらず大食の人がとても多い。

 あるいは大食しない人でも、甘いものに目がない人がとても多い。
 男性ではアルコールが止められない。ほとんどアル中である。あるいはコッテリとしたものやスナック菓子、各種インスタント食品の馬鹿食いである。

 せっかく漢方薬が効果を発揮しても、スーパーに行けば大量に食料を買い込んで馬鹿食いする。あるいは会社の引き出しの中に甘い和菓子やチョコレート類を大量にしのばせて、一日中、むしゃむしゃがとまらない兵(つわもの)の女性達がとても多い。

 実に性懲りない面々である(苦笑。
 
ジョウビタキのオス
posted by ヒゲジジイ at 21:30| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月17日

そろそろ老齢ゆえ、無理をしない仕事に徹するには・・・

 会社員であれば、あと2年以内に定年退職である。しかしながら個人経営だから頭がボケない限りは老齢になっても延々と続けられる仕事である。

 といっても体力だけは衰えは否めず、堪忍袋の緒もかなり緩んできている。だから無理をしないに限る。
 やり甲斐のある仕事だけに徹するようにするには、嫌な客を寄せ付けないに限る。

 たとえば、最も苦労の多い重症のアトピー性皮膚炎では、各地から本当に気概のある熱心な人達が集まって来ているが、本気で来られる人が多いから、頑張り甲斐もあり、フラフラになりながらもあれかこれかの弁証論治に熱が入るのである。
 
 もしも相談者が及び腰だったり、お気楽だったりすれば、神経の消耗戦に等しいあのように過酷な苦労をする意欲が湧くわけがないだろう。

 商売だけに徹すれば、そのような連中にまで揉み手をしてお愛想の一言でも発するかもしれないが、巧言令色すくなし仁とはよく言ったもので、そのような思わせぶりな相手やクレーマー予備軍を相手にしてまで自分を偽り、苦労の多い仕事を請け負うつもりはない。

posted by ヒゲジジイ at 10:50| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月30日

アトピー性皮膚炎の火消し役ばかりで神経を消耗する毎日

 毎年まいとし、アトピー性皮膚炎で、急に悪化の一途を辿り、一般皮膚科治療だけでなく漢方専門薬局でもステロイドを乱用され、朝鮮人参製剤を過剰投与されるなど、一時はよいように思った人達でも季節の変わり目などに、急に悪化の一途を辿って、そのピークに達しようという最悪の状況下で来られる人達がとても多い。

 いつも火消し役ばかり背負わされている気分にもなるが、炎症が激しい状態で、同時にステロイドの乱用による滲出液が吹き出ているケースに遭遇する機会もしばしばである。

 漢方薬だけでは速効はむりだからと、皮膚科治療と並行して行うべく説得して無理に皮膚科にも行ってもらった所が、出された軟膏類で却って痒みが激増する。
 もともと同じ皮膚科でこんなに悪化したのに、やっぱり同じことではないかと患者さんに恨まれたこともある(苦笑。

 結局、漢方薬だけで試行錯誤を繰り返して数ヶ月、多くは数ヶ月の艱難辛苦を乗り越えて、ようやく下火を迎えることとなる。
 その数ヶ月間の消火作業の苦労たるや、他の疾患ではあり得ないほどの難行苦行である。

 過去にはギブアップしたくなるほど難航したこともあるが、皮膚科治療でステロイドに嵌ってしまい、漢方治療でも結局は次第に悪化し、行き場を失って辿り着いたのが我がトウヘンボク薬局であるから、見捨てるわけにも行かない。
 
 しかしながら、多くの場合、互いの難行苦行の成果が実って、数ヶ月もすれば突然落ち着きだすのが通例である。

 結構しんどい仕事ですよ。

posted by ヒゲジジイ at 23:34| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月26日

アトピー症状に近くで漢方専門の病院か薬局を教えていただきたい

性別 : 女性
年齢 : 20歳〜29歳
御職業 : 学生
簡単なご住所 : 関東地方
具体的な御職業 : 看護大学生
御意見や御質問をどうぞ : 1年前より一人暮らしを始め秋口より痒みが増しいわゆるアトピー症状がでてます。
 乾燥しいらいらすると痒みが増してきます。
 近くで漢方専門の病院か薬局を教えていただきたいのですが


お返事メール: 初期のアトピー性皮膚炎では、敢えて漢方治療を求めなくても、一般西洋医学治療で十分に緩解できるものです。きっとステロイドの使用を恐れられているのでしょうが、正しいスキンケアとステロイド軟膏の正しい使用方法を心得られた皮膚科に受診されれば、案外、即効的に緩解できるものです。

アトピーとステロイド

ピントの合った的確な漢方薬を処方してもらうためには、意外に相当な熟練が要るものですので、即効性が望めるとは限りません。

 当方には様々なレベルのアトピー性皮膚炎の方が遠近様々なところからやって来られていますが、一般西洋医学治療のみならず、地元の漢方専門医や漢方薬局でも治療に失敗し、却って悪化してしまったためにやって来れれるケースがとても多く見られます。
 それらを分析してみますと、まず西洋医学治療では、正しいスキンケアとステロイド軟膏の使用方法の指導が皆無である。
 漢方治療では最近遭遇した例でも、たとえば消風散を主体にした配合で、却って悪化しているにも関わらず、医師が頑固に消風散製剤にこだわりすぎるために、ますます悪化してしまった例など。

 しかしながら、最初に受診された西洋医学治療において、上記でもリンクした
http://murata-kanpo.ftw.jp/u48283.html

 ここにあるように金沢大学医学部の皮膚科、竹原和彦教授の指導されるような正しい指導が行われる限りは、西洋医学治療によって副作用なしに十分緩解できるはずのものなのです。
 漢方治療に関しても、西洋医学治療と同様、運が悪いと却って悪化する場合もあり得るので、相当に熟練した専門家でないと危険です。一時悪化することがあっても臨機応変に対処してくれる融通性のある専門家でないと、他の疾患に比べても遙かにデリケートなアトピー性皮膚炎においては、専門家のみならず患者さんの方にも臨機応変の柔軟性を必要とします。

 ともあれ、まずは信頼の置けそうな西洋医学の皮膚科に受診されることをお奨めします。
 以上、貴女の意に沿わないお返事かと存じますが・・・以上、お返事まで。
             頓首

漢方薬・漢方専門薬局薬剤師の憂鬱 拝


【編集後記】 もしも不運にも西洋医学治療でコントロール不能に陥り、ステロイドの乱用という罠に陥りかけた場合は、ステロイド地獄の泥沼にはまり込む前に漢方治療を求めた方が無難であろう。
 しかしながら、上記の金沢大学の竹原和彦教授らが指導される正しいスキンケアと正しいステロイド軟膏の使用方法を行えば、多くの場合、ステロイド地獄に陥ることなく、十分緩解できる可能性も高いはずである。
 但し、現実的な問題を言えば、そのような正しい指導が行われていない場合が多いのも事実で、そのために近年、西洋医学治療を断念して漢方薬を求めて来局される人が増加する一方である。既に保険漢方の投与も長期間受けた末に、ますます悪化したり、あるいは改善されないまま自費の漢方を求めて来局される人達が驚くほど増えているのが現実である。
 そこまでになると皆さん覚悟が出来ているだけに、腰の据わった漢方相談が行えて、比較的スムーズに緩解して行くケースが多いという現実がある。

参考サイト:漢方と漢方薬によるアトピー性皮膚炎研究変遷史
posted by ヒゲジジイ at 16:02| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月03日

皮膚病専門の漢方処方ではアトピー性皮膚炎が治り難いのはなぜか?



 アトピー性皮膚炎の漢方薬をネットで調べると、消風散(しょうふうさん)や十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)あるいは荊芥連翹湯(けいがいれんぎょとう)など、皮膚病専門薬的な方剤が特効薬のように書かれている割には、一部の人を除いてなかなか寛解せず、却って悪化する人も出てくるのはなぜか?

 アトピー性皮膚炎は単なる皮膚の疾患ではなく、五臓六腑すべてに関連しており、とりわけ肺・脾・腎にもっとも関係が深いという認識が足りないからである。といっても肝と心の影響もかなり強いので、結局は五臓六腑のバランス調節を行って全身の体質改善が必要なのである。

 アトピー患者が爆発的に増加したのはここ数十年のことであり、漢方治療もそれほど長い歴史がある訳ではないので、冷えが根本原因であるとか、胃腸に原因があるとか、様々に論じられているが、それほど簡単に論じられるものではないはずだ。

 すくなくとも五臓六腑のバランスを正常に戻してあげれば、結果的に治るのだから、一面的な捉え方は出来ない問題である。

 実際にはアトピー性皮膚炎に限らず多くの慢性疾患にも共通したことであり、あらゆる慢性疾患は五臓六腑のすべてに関連するものと言っても過言ではないのである。
 だからこそ、1〜2種類くらいの漢方薬ではなかなか治りにくい理由がここにある。
posted by ヒゲジジイ at 13:44| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月17日

漢方相談の最も重要で難しい問題点━なかでもアトピーで

2007年6月22日のボクチン(3歳)
2007年6月22日のボクチン(3歳) posted by (C)ボクチンの母

 漢方相談においては、相談を受ける当方の質問の仕方が最も重要ではあるが、同時にご相談者の表現力というか表現意欲、具体的な状況の表現力の問題によって、より早くピントが合うかどうか、いつまでもだらだらとピントが合わずに効果を発揮出来ない場合もある。
 もちろん、当方の実力不足の問題もないではないが、得意分野の一つであるアトピー性皮膚炎においては、極端に服用者の観察意欲と表現意欲の問題に左右されている点は否めない。

 痒みが強く、赤みが出現するのは皆さん共通しているが、どういう状況でそうなるのか? 寒熱の問題、乾燥の問題、浸出液の問題、風呂上りに温まると痒みが出るのか出ないのか? クーラーに対する影響など、当方から提出する質問に客観的および主観的に表現できるかどうか、繰り返し類似した質問を方向を変えて行うことに、その質問に対して真正面から回答してもらわねばならない。

 また、配合変化による反応について、処方の組み合わせ毎の客観的および主観的な体感を敏感に感じ取り、正確な表現を行ってくれる人ほど、早く正確なピントが合いやすい。
 これがどうしても出来ない人では、ただ「痒いカユイ」以外の言葉以外の日本語を知らないオバカサンと判断して、御相談を打ち切らざるを得ない事態も稀には生じることになる。

 それゆえ自ずから、冷静な判断力と表現意欲のある人ばかりを受け入れるという選別を行わざるを得ないので、だからアトピー性皮膚炎に対する改善率は相当高くなるのは当然かもしれないのであった(苦笑)。

 但し、アトピーが一筋縄では行かない証拠に、最初に服用してもらった清熱除湿・滋補肝腎法では非常に寒がってやや悪化傾向が見えるため、益気固表法の玉屏風散製剤を併用してもらうことで急速に改善していたところ、職場に戻った途端に再び熱感を伴う発赤と滲出液が再発。

 今度は玉屏風散製剤を廃止し、最初にやや悪化したはずの清熱除湿・滋補肝腎法に戻したところ、再び寛解状態にもどり、比較的良好な経過を辿っている例があるなど、こういう例に限らず状況による適切な臨機応変の配合変化が行えるかどうかは、当方の実力もさることながら、服用者の観察と正確な報告に負うところが大きいのである。

 代表的な実例として⇒ 親子で異なるアトピー性皮膚炎の治療方剤

2007年6月22日のボクチン(3歳)
2007年6月22日のボクチン(3歳) posted by (C)ボクチンの母

posted by ヒゲジジイ at 01:27| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月14日

アトピー性皮膚炎は男性よりも女性の方が2倍難しい理由

 女性のアトピーの方が男性よりも2倍難しい・・・といっても比較的得意分野だから、真面目に通われて治らなかった人は思い出せない。
 数回で諦めた人、数ヶ月以上の根気が続かなかった男性など、思い出せば、過去には途中で脱落した人はいる。
 でも、9割以上の人は真面目だから、すくなくとも最終的には9割前後の寛解は得られている。

 ともあれ、昨今、このブログも本性を暴露して、漢方と漢方薬の質疑応答集と村田漢方堂薬局の近況報告 の派出所であることがバレバレである。それはともかく本題に入れば・・・・・

 他でもない女性には毎月の生理や排卵日など、男性にはない体調異変が生じるので、漢方薬によるアトピー治療を試みている初期段階では、往々にして排卵日や生理が始まる前になるとアトピーに異変が生じる場合があるので、その都度、漢方処方の配合変化を行う必要が生じるケースが意外に多い。
 一時、清熱作用の強い方剤を中止するなど、折々に男性以上に繊細な配慮が必要である。

 実に複雑怪異な女性たちは、古人が述べたように病気の種類が男性よりも百病多いのである。

 但し断言できることは、アトピー性皮膚炎は美容にも直結しているために、男性よりも女性の方が熱心な傾向にあり、漢方薬の風林火山的な臨機応変の運用 に協力的な人が多いので、結果的には男性よりも女性の方が寛解率が高いのが現実である。
posted by ヒゲジジイ at 20:23| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月08日

甘ったれた考えのアトピーの女性

 月曜日の忙しい一日が、あと1時間で終わろうとする夕方。
 夕方前からアトピー性皮膚炎で通われている8ヶ月目の人や4ヶ月目に入っている人など、漢方薬の組み合わせの微調整の相談に乗っている最中に、新しい若い女性のアトピー相談。

 受け付けの女性薬剤師が応対に出たが、お断りするのに相当苦労している気配。終わった後に疲労困憊の様子なので事情を聞くと、よくあるいつものパターン。
 薬を飲むのは好きではないので、直ぐに効く薬が欲しい、パッと効くのがいいのだと主張するのだという。そんなに甘いものではない、到底ご要望にはお応え出来ないからとお断りするのに、このような分からず屋に限って執拗である。

 朝からずっと多忙続きの一日が終わろうとする時になって、このような若い女性の馬鹿頑固には、中年過ぎの身体にはあまりに応えるのである。
 薬局の閉店後、とうとう頭痛を起こして一時寝込んでしまったほど、あまりに多忙な日は骨身に応える時がある。

 真面目に通い続けるアトピー性皮膚炎の重症者は多いのに、軽症の者に限ってワガママの言いたい放題、という傾向があるのは不思議である。
 それもまた決まって分からず屋は女性なんだから、この國はどこか狂っている。
posted by ヒゲジジイ at 00:53| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月31日

かなり自信のあるアトピー性皮膚炎の漢方相談ではあるが・・・

 アトピー性皮膚炎を長年、西洋医学治療で治らずに保険漢方治療に移行して数年以上、それでも治らず困惑されて電話やメールでお問合せはとても多い。
 それゆえ遠近様々な地方からやって来られ、数回で諦める例外的な人を除けば、皆さん比較的順調に治っていくので、とてもやり甲斐のある仕事である。

 ただ、とても残念なことに、各地で漢方治療でも治らずに相当に何年にも亘って苦労されている人からのお問合せが多いものの、当方が漢方薬局の性質上、自費の漢方であることに躊躇され、結局は踏ん切りがつかずに40歳を超えてしまっている人がいかに多いことか!

 非常識な価格設定を行っている訳でもなく、むしろ一つひとつの漢方薬の価格は飛びっきり良心的な設定だと自負しているのであるが、自費の漢方に出費が可能な人と、そうではない人では・・・自費の漢方であるがゆえの利点も多いのであるが、やはり経費的な問題が足かせになれば、当方の実力も充分には発揮できない訳だから、痛し痒しである。

 余分な遊興費や贅沢品や嗜好品、酒代やオシャレなどに費やす無駄を節約すれば、いくらでも捻出できそうな額だと思うのだが、アトピー治療よりもそちらの方に価値観を置く矛盾に気が付いた人達だけが、不屈の決意を持って日々やって来られるのだが、そういう殊勝な人達でなければ、やはり自費の漢方は無理な話なのだろう。

 人様々である。
posted by ヒゲジジイ at 00:23| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月26日

アトピー性皮膚炎の体質改善と称して小建中湯を投与される疑問

 たとえどのようなタイプのアトピー性皮膚炎でアレ、中医漢方薬学的な観点から考察すれば、日本漢方というか日本の医療用漢方で繁用される小建中湯の投与には理解に困しむ。
 先日も長文のお手紙で、子供さんのアトピーが生後直ぐから発症して様々な病院治療に抵抗して悪化と軽快をくりかえし、気管支喘息まで併発しながらステロイド含有軟膏を塗り続ける状態が続いている。ほかにも免疫療法の類を受け続けており、漢方薬もここニケ月は小建中湯を投与されている。
 なんとか当方の漢方相談を申し込みたいが、親御さんに漢方利用経験が無い場合はお断りしている事情を曲げて、是非、御相談に乗ってほしいというお手紙であった。
 確認したところ、案の定、小建中湯を服用以来、一時増悪して強いステロイド含有軟膏で今はすこし軽快している状態だというので、即刻小建中湯は中止してもらった。直接来られてのご相談を受ける前からである。

 小建中湯というのは、膠飴という豊富な糖分が含まれ、痒みの原料となるものです。おまけに桂枝(桂皮)というシナモンが豊富に含まれているので、温める効果が強すぎますので、皮膚に熱感が強く赤味が生じるタイプでは、他に適切にバランスを取ってくれる漢方処方の配合が無ければ、やはり痒みを増強し、アトピーを悪化させる方向にしか作用しない場合が多いものです。
 医療用漢方では、アトピー性皮膚炎に対しても、体質改善という名目で小建中湯が投与されているケースが意外に多く、こういう根本的な▲▲▲を犯しているのが日本の漢方界のどうしようもないレベルの〇〇を示す一端かもしれません。
 どのようなタイプのアトピーであれ、少なくとも小建中湯を中止されたのは大正解です。


 というコメントをお送りしたばかりだ。公開するにはややキツイ表現があるものの、本音を書けばこういうことになる。
 人間の身体は千差万別だから、まれには小建中湯がアトピーに有効な場合もあり得るだろうが、あらゆる方向から検討しても、中医学理論的にはほとんどあり得ない方剤である。補中益気湯の場合は、陰火に有効であると言う高度な中医学的な理論からも、脾肺病としてのアトピー性皮膚炎を考える方向からも、体質によってはあり得る方剤であるが、小建中湯となれば、以上の文面中にもあるように、なかなかアトピーには適応が滅多にある方剤ではないと思われるのだが、これに対する説得力のある反論があれば、是非お聴きしたいところである。
posted by ヒゲジジイ at 13:54| 山口 ☔| アトピー性皮膚炎・酒さ、および各種湿疹類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする