めまいがひどくて入院した中年男性。その入院治療でめまいは軽快したが、途中からシャックリがはじまって何日も止まらず、体力の消耗激しく、食事も思うように摂れない。
3日前から医療用の漢方薬「ツムラの芍薬甘草湯」エキスが投与され、服用中であるが、一向に改善するどころか、ここ数日ますます体力を失って、栄養不足のためか、歩くのにふらつくほどだと言われる。
患者さんの奥様が代理で来られ、「シャックリに効く漢方薬はないでしょうね?」という及び腰の質問からはじまった。
どうも、以前来られたことのある人のようだから、そのことを訊ねると、やはり十数年前に、回転性めまいが強烈で、病院治療では思わしくなく、結局、当方の漢方薬で治って以来、十年ぶりの再発だったとの事である。
早速、昔の相談カードを取り出してみると、二年近く沢瀉湯製剤と葛根湯加減方剤の併用だった。ややむくみやすい水分代謝のよくない体質であるから、沢瀉(たくしゃ)と白朮(びゃくじゅつ)のみならず、茯苓(ぶくりょう)まで配合された製剤が主方で、頚椎症からくる部分も疑われたので葛根湯加減方の製剤も併用していた人である。
このように二年間、漢方薬を連用され、ピントがあってからはご主人の代理としていつもこの婦人が漢方薬を買いに来られていたので記憶があったということだった。
十数年前とは言え、二年間でひどかった回転性めまいを当方の漢方薬でしっかり治った過去があったから来られたらしいが、それならそうと早くおっしゃればよいのに、あまりに及び腰だからお断りする寸前のところだった。
あらゆる諸検査によっても、しゃっくりの原因となる異常はまったく発見できずに主治医も困惑しているということなので、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)エキス散をお渡ししようとしたが、まだ躊躇されているので、困ったものである。
通常ならそこで、あっさり引き下がって終わりになるところだが、以前、当方の漢方を二年間利用されて一旦はめまいが完全に治ったと思っていたのに、十年ぶりに再発したために、恩義よりも不信感の方が強いのかもしれないが、医療用漢方メーカーが漢方薬は病院で求めるようにとテレビで盛んに宣伝する時代だから止むを得ない。
それならそれで、当方にも漢方薬の専門家としてのプライドがあるし、第一患者さんのためにもなることだから、主治医の大きなヒントになるように、現在、その入院されている病院で服用中の芍薬甘草湯について強く示唆しておくことにした。
確かに芍薬甘草湯は筋肉痙攣を治す漢方薬ではあるが、水分を保持させる作用が強いので、水分代謝の悪い人の回転性めまいにはやや問題があるかもしれないこと。さらに芍薬甘草湯を三日も服用しても一向に止まるどころか、体力をますます消耗しているのは、この男性のシャックリには無効であろうということ。もしかすると冷蔵庫で冷やされた点滴液の冷気によって内臓が冷やされてシャックリがはじまったのかも知れないこと。その場合には呉茱除酷窒ェ適応すること等を述べ、あくまで参考意見としてお贈りした。
さらに結論として、大して高価な値段でもないのだから、それほど体力を消耗しつくしているのなら、試して損はないと思いますがね、と念押しだけはしたのだった。(結局、迷いながらも10日分30包入りの呉茱萸湯エキス細粒の製剤を買って帰れらたがのだが・・・)
posted by ヒゲジジイ at 19:30| 山口 ☔|
シャックリ
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