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2025年10月22日

大塚敬節先生の私淑者としての思い出(村田恭介)

posted by ヒゲジジイ at 09:19| 山口 | 息抜き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年10月20日

中国で発行された中国語原書の『日本漢方医学』

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 村田恭介の考えが本書の最終まとめとして引用紹介されている。000000244.jpg000000243.jpg

「村田恭介は日本漢方の将来として『中医漢方薬学』を声高に提唱しているのであるが、現在までのところ、日本の漢方界では基礎理論の研究と運用をないがしろにしたまま、今日にまで至っている。」

 中国中医薬出版社発行から、1994年発行の書籍である。
 古いといえば古いが、この書籍に限らず中国・台湾・韓国などの漢方関連書籍類や中医学雑誌に、ヒゲ薬剤師(村田恭介)の拙論がしばしば紹介された。

 先日も懐かしい故矢数道明先生からの古いはがきを整理していたら、中国の雑誌に、ヒゲ薬剤師の論文が3つとも全文が転載されたというご報告のおはがきがあった。

 しかしながら、それらの雑誌類そのものは入手していないから、矢数先生のご報告で知るのみということが大変数多かった。

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「村田恭介は日本漢方の将来として『中医漢方薬学』を声高に提唱しているのであるが、現在までのところ、日本の漢方界では基礎理論の研究と運用をないがしろにしたまま、今日にまで至っている。」(この部分を最後に本書の全文が終了。日本語訳はヒゲ薬剤師。)
posted by ヒゲジジイ at 10:20| 山口 | 日本漢方の現実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年10月17日

漢方製品開発歴

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まずは日本では健康食品扱い:小太郎漢方製薬とウチダ和漢薬から2品目

石流茶 90包入

成分:連銭草と裏白樫


霊竹梅 90包

成分:霊芝・かわらたけ・さるのこしかけ


漢方薬エキス剤の製品化を提案して実現した漢方薬(医薬品)

小太郎漢方製薬から7品目:開発を提案して製品化が実現
コタローさんより、

  温胆湯エキス細粒 90包
  三物黄芩湯 90包
  帰脾湯 90包
  補気建中湯 90包
  分消湯 90包
  茯桂味甘湯 90包
  竹葉石膏湯 90包



過去の漢方関連製品開発歴

数十年前の漢方関連製品開発歴を紹介


■製品開発を立案して誕生した漢方薬(医薬品)

元営業部長、故S氏に強烈に発破をかけて実現!
 
[参考関連ブログ:ウチダの生薬製剤二号方と丹心方]

1995年 『ウチダの生薬製剤二号方』とまったく同じ成分の『丹心方』(いずれもウチダ和漢薬製造・販売)
 
【効能・効果】
 中年以降または高血圧の傾向のあるものの次の諸症:頭痛、頭重、肩こり、めまい、動悸。
【成 分】 
 センキュウ・シャクヤク・コウカ・モッコウ・コウブシ・丹参

*原料生薬の指示その他、基本的な部分の全てを指導。

 理想的な行気活血の方剤が生まれたと自負していますが、日本全国の漢方専門薬局などで販売されています。その具体的な使用方法などを、ウチダ和漢薬さんに依頼され、村田恭介自身が『和漢薬』誌の513号(1996年2月号)で「丹参製剤 生薬製剤二号方」と題して、かなり長文の論文を発表しています。中医学的な効能は、瘀血阻滞に対する「活血袪瘀・行気止痛」というよりも、2004年12月28日夜の考察では「行気活血・袪瘀止痛」の方剤と表現したほうがより適切だと考えています。
 
 ウチダ和漢薬を去ってしまった元営業部長の故S氏に強く発破をかけて実現したもので、彼とはシバシバ意見の食い違いから仲たがいばかりしていましたが、これを書きながら、懐かしくって仕様がない。アぁ〜っ歳を取ったものだとため息が出てしまいます。少し目に涙が浮かびそう。それだけあの当時がなつかしい。昨今は、彼のように私と丁々発止のバトル(意見交換)が出来るような人物が、もう回りには誰もいない。

 ともあれ、私が生まれた同じ年の昭和二十五年に創刊されたこの『和漢薬』誌は、それ以来毎月コンスタントに発行され、2004年11月現在618号が発行されていますが、村田恭介自身はその299号から551号までの間に、論文・随筆・翻訳とその解説および書評など、合計で百数十回にわたって執筆して来ました。

 なかでも八十六回続いた訳注『中医病機治法学』(陳潮祖著)は、あと十数回で完結という惜しいところで中断してしまいましたが、その中の「訳者のコメント」部分には相当に力を入れたものでした。

 そもそもあの連載がはじまった経緯というのは、某社との契約で村田恭介個人訳としての出版計画が着々と進行していたところ、訳者多人数で行われていた他社に先を越されて出版されてしまい、計画を中断せざるを得なくなり、愚痴っていた村田に同情した『和漢薬』誌の編集長が、それに訳者のコメントを付して連載してみてはどうか、との申し入れがあり、渡りに船とばかりに乗らせてもらったという訳でした。

 ところで、連載の途中に名古屋の某大学医学部の医師M先生から、出版社を紹介するから訳注を早くまとめて出版しないか、との大変ありがたいお誘いを受けたことがありました。また同じ頃から編集長からも、詳細な訳者のコメントを付した書籍を出版したらどうか、と何度も促されたものでしたが、他社に同じ内容の本があり、しかも原著の訳文だけでもかなりな分量の上に「訳者のコメント」を加えると相当な大冊の書籍となり、販売価格も高額となり、売れ残って出版社に迷惑をかけるのが目に見えているから、イヤだイヤだとダダを捏ね続けていつの間にか、あと一年と少々で完結という時点に来ていたのですが・・・。

 と、その頃、たまたまウチダ和漢薬の社長とチョットした意見の食い違いから、長州人特有の短気が勃発しているところへ、江戸(東京)から「旗本」出身の編集長がみえられ、「そろそろ私も歳だから、いつ編集長を辞めないとも限らないから、連載を打ち切って例の出版に踏み切らないか」との申し入れ! 長州藩士出身の村田は内心カッ!ときて、このタイミングにわざわざやって来られての申し入れは、きっと私と社長とのトラブルにリンクしてのことに違いない、さては京都見廻組(旗本出身)が長州にまで乗り込んで藩士狩りにやって来たかとの思い込み。それゆえ、連載中止に応諾したのはもちろん、出版の件も固くお断りしてご辞退申し上げた、という次第。

 このこと以来、従来ならいつも応諾していた随筆の執筆依頼や論文の要請にも、全てお断りし続け、数年前に編集長が交代されてからは、『和漢薬』誌とは全く没交渉となって現在に至っています。
 我ながら、長州人の馬鹿頑固という以外に表現のしようがありません。


■漢方系の健康食品を考案し開発指導したもの

 1983年前後 松浦薬業の『零芝+丹参』およびウチダ和漢薬の『霊丹参』は1985年頃にと、これら類似の二種類を立て続けに開発し、日本全国でかなりな評判を呼びましたが、数年後に主成分の「丹参」が完全な医薬品(漢方生薬として)に出世したために、健康食品としては製造・販売することが出来なくなり、医薬品としての許可をとらなくては薬事法違反となるため、残念ながら二社製品とも製造を中止せざるを得ませんでした。

 いまだに「まぼろしの霊丹参」として語り種になっていますが、大変な自信作であっただけに、私自身もいまだに残念でなりません。二社とも医薬品としての製造許可を取得したいと奔走したのですが、「霊芝」の植物学的な起源等、その他様々な理由で医薬品としての許可を得るのは殆ど不可能とのことで、二社とも断念した訳です。

 但し、このときの教訓を活かして、のちに、上記したような「丹参」を主成分とした立派な医薬品『生薬製剤二号方』が誕生したのです!
 また、健康食品としても、次のような大変ユニークな製品も誕生することになりました。

1980年代後半 『雲南貴精』(ウチダ和漢商事製造・販売)

【主な原材料】
 霊芝・田七人参・枳殻

*現在も全国各地の主に漢方薬を専門に扱うような特定の薬局・薬店などで販売されています。


1995年前後 『雲南片玉金』(ウチダ和漢商事製造・販売)

【主な原材料】  
 鬱金・田七人参

*現在も上記の雲南貴精同様、全国各地の特定の漢方専門薬局などで売られていますが、主原材料の「鬱金」は、どこにでも売られている「ウコン」とは原材料の採集部分が全く異なります。

 通常の「ウコン」は、原植物の『根茎』部分が主体ですが、ウチダ和漢薬の製品では、『根塊』部分のみの製品です。根茎はかなりな量が採れますが、根塊部分は根の先に付く小さい塊で、大量には採れません。しかも性質が微妙に異なっており、そのために中国では「玉金」ともいいます。 さらに重要なことは、日本で「ウコン」と呼ばれるものは、中国では「姜黄」といわれ、決して「鬱金」とは呼ばれません。鬱金とは、あくまで前述の根塊の部分である玉金のことなのです。

 もっと詳細な原色物に関する興味深い話題もあるのですが、今述べた内容でさえ、何度説明しても医師・薬剤師などの専門家でさえも混乱して理解してもらえないことがありますので、ここではこれ以上の詳細は述べないことにします。
 理解のヒントは、根茎と根塊の違いです。
posted by ヒゲジジイ at 16:14| 山口 ☀| 漢方製品開発歴 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年10月16日

「ウチダの生薬製剤二号方」の中医学的効能

村田恭介が立案して誕生した「生薬製剤二号方」の中医学的な効能

[参考関連ブログ:ウチダの生薬製剤二号方と丹心方]

 ウチダの生薬製剤二号方が医薬品として許可され、市販されてしばらく経過した時点で、1996年2月号の月刊『和漢薬』誌513号に『丹参製剤 生薬製剤二号方』と題した拙論が巻頭を飾らせてもらっていますが、その長文の論説中、純粋な中医学的分析・解明の部分のみをピックアップしてまとめあげたのが本論です。

 漢方薬の学習は本来、学問的にも臨床実践の上でも、西洋医学言語で理解する以前に極めて重要なことは、いかに漢方医学的に、あるいは中医学的に、西洋医学言語ではない純粋な東洋医学言語による理解と考察が必要なことは言うまでもない筈なのですが、現代の風潮は何でも安易に「わかりやすい」という一見尤もな理由から、却って基本から遠ざかり、中国伝統医学の本質をいつのまにか忘却した売らんかな主義が横行しているのを見るにつけ、実にウンザリさせられていますので、ここでは中医学言語以外は殆ど使用しない解説文を掲載することに決めた!という訳です。

 つまり、本方の行気活血袪瘀作用の適応が瘀血阻滞に対することは当然にしても、そもそも瘀血そのものが二次的な病理産物であることが多いということを知っていれば、単独投与では対症療法に終わることもあり、あるいは本論の後半で述べるように、単独投与による様々な不都合が生じることもあり得るわけです。「血液サラサラ!」「血の流れを良くする!」などのキャッチコピーもよいけれど、そもそも、その血行障害を生じさせた原因は何か。つまりは「治病求本」の原則を忘れてはならないと思うのです。

 内容は一部改正・改変・増補しています。

 本方の組成は、1日分3包(6g)中、
    丹参  4,500g
    紅花  2,250g
    芍薬  2,250g
    川芎  2,250g
    木香  2,250g
    香附子 1,250g
 となっていますが、狭心症などの冠状動脈疾患の治療薬として、三十年前に中国医学科学院で開発された「冠心二号方」と配合内容がかなり類似しています。
 冠心二号方の組成は、〔注記:本方は中国における薬用量で、日本人には多すぎます!
    丹参  30g
    紅花  15g
    赤芍  15g
    川芎  15g
    降香  15g

 となっており、冠心二号方の赤芍が日本薬局方の芍薬となり、降香のかわりに木香と香附子の二味に入れ替えたものが「生薬製剤二号方」です。それゆえ、効能面においても殆ど同様に、活血化瘀方剤と考えてよいのですが、強いて言えば本方のほうが、冠心二号方よりも行気作用が若干強くなっていますので、本方は「行気活血」の方剤と表現すべきであると思います。

 【丹参】の性味は苦微甘、帰経は心・肝、効能は活血袪瘀・涼血消腫・養血安神です。
 【紅花】の性味は辛温、帰経は心・肝、効能は活血・袪瘀・通経です。
 【芍薬】の日本産は、私見では中医学における赤芍と白芍の中間的な生薬と考えており、したがって性味は、苦酸微寒、帰経は肝・脾、効能は清熱涼血・補血袪瘀・斂陰平肝・柔肝止痛であると愚考しています。
 【川芎】の性味は辛温、帰経は肝・胆・心包、効能は活血行気・袪瘀止痛です。
 【木香】の性味は苦辛温、帰経は脾・胃・大腸・胆、効能は行気・調中・止痛です。
 【香附子】の性味は辛微苦微甘平、帰経は肝・三焦、効能は疏肝理気・調経止痛です。

 以上の配合薬物を総合すると活血袪瘀・行気止痛の方剤となりますが、より正確には行気・活血・袪瘀の方剤と考えたほうがよさそうです。活血袪瘀方面の丹参・紅花・芍薬・川芎という四味の配合分量と、行気方面の川芎・木香・香附子の三味の配合分量を比較すると、活血袪瘀にウエイトが置かれた方剤であることは明らかなのですが、「気は血の帥」であり「気が行れば血は行(めぐ)」り「気はよく血を行(めぐ)」らせるので、「活血するには先ず順気を優先す」べきですから、血行改善の水先案内としての行気薬三味の意義は重要なわけです。

 それゆえ、生薬製剤二号方は「活血化瘀」の方剤というよりも、むしろ完成度の高い「行気・活血・袪瘀」の方剤であるとしたほうが、より的確な表現であると考えるわけです。但し、中医学的な表現としては「活血袪瘀・行気止痛」のほうが比較的具体性を感じさせる表現ですので、「行気・活血・袪瘀により止痛効果もあり」と複合させて考えると便利かもしれません。そえゆえ「行気活血・袪瘀止痛」あたりが一番よいかも知れませんね。まあ、このようにあれこれ考えていると、次第に言葉遊びの世界に入り込んでいきますので、このあたりでやめておきましょう

 以上のような、2004年12月28日夜のあれこれの考察により、「行気・活血・袪瘀作用があって、これによって止痛作用もあり」ということから、行気活血・袪瘀止痛を結論にしたいと思います。


 ●血府逐瘀湯との比較

 最近日本国内にもエキスと原末を混合して製剤化された「血府逐瘀丸」が輸入許可されています。

 【成分】当帰・川芎・地黄・桃仁・紅花・枳実・芍薬・柴胡・甘草・桔梗・牛膝

 この血府逐瘀湯はかなり完成度の高い方剤で、応用範囲も生薬製剤二号方と多くの部分で共通しています。むしろ方剤単位で考えれば、薬味が多種類配合されている分、完成度の点では血府逐瘀湯の方が高く、自己完結型の方剤と言えます。適応する場合は、単方でも優れた効果と根治能力を発揮できます。桃紅四物湯合四逆散の加減方であり、地黄や当帰の配合により、瘀血によって生じる血虚(瘀血が除去されないと新血が生じにくいため遷延すると血虚が生じる)を補い、あるいは袪瘀しても陰血を損傷することなく便利な方剤ですが、場合によってはこの薬味の多さがわざわいして、気軽に応用できない面があります。かなり的確な弁証が必要な方剤です。その点では生薬製剤二号方は薬味が少なく、それほど自己完結的でない分、他剤との併用がしやすく、また比較的気軽に使用できます。

 蛇足ながら、血府逐瘀湯を一般製剤で代用するには、大柴胡湯や四逆散に疏経活血湯や折衝飲の合方で可能です。

●使用上の注意

 生薬製剤二号方における中医学的な使用上の注意を述べます。

 肝腎陰虚の人や火盛の体質などでは慎重に用いるべきで、弁証論治の基本原則を怠り、売らんかな主義で販売することばかりに熱中して安易に投与すると、本方の温燥の性質により、ますます傷陰して肝陽偏亢を助長したり、あるいは肝陽化火を誘発し、実熱証では熱毒を助長してしまうので、適切な弁証分析に基づいて滋陰剤や清熱解毒剤などを併用して、必ず配合のバランスを取る必要ががあります。

 また、気滞血瘀証に間違いなく、しかも明らかな陰虚や実熱が認められないようでも、本方を服用すると熱感などを生じて不快な場合は、五臓六腑のどこかに陰陽バランスが極めてデリケートな部分がある証拠です。温燥の本方では傷陰の影響が出たり、あるいは化火してしまうタイプですので、適切な滋陰剤や清熱剤を加えるべきです。あるいは血府逐瘀湯に変方してみるのも、一つの方法です。

 明らかな気血不足の人には、補気剤や補血剤、あるいは気血双補剤を併用します。このような正虚に対する配慮が欠けた使い方をすると、たとえ即効があったにせよ、次第に正気を支えられなくなり、いずれは治療効果も失って、生薬製剤二号方の本来の役割を十分に果たせなくなります。

 脾胃に問題があり、単方の投与で胃腸にさわるような体質の人でも適切な方剤と併用すれば、胃腸を丈夫にしながら本方の効能を十分に発揮させることも可能です。
posted by ヒゲジジイ at 09:20| 山口 ☁| 漢方薬の利用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年10月15日

瘀血阻滞(おけつそたい)とその形成原因

瘀血阻滞(おけつそたい)とその形成原因

村田恭介が製品開発を指導した「生薬製剤二号方」の理解のために

 本論は、もともと月刊「和漢薬」誌の513号(1996年2月号)の巻頭論文として、『丹参製剤 生薬製剤二号方』として執筆した論文中の一部をピックアップしたに過ぎません。

 しかしながら、当時「瘀血阻滞」、俗に言う「ふるち」の形成原因を出来るだけ詳細に分析・考察するために、中医学理論の中国語原書を広く漁って、纏め上げた部分ですので最も力が入った部分でもあります。

 「瘀血」に関するこれだけの知識を有機的に活用出来るように工夫すれば、生薬製剤二号方をフル活用できるであろうと考えて、挿入した理論部分という訳です。

 生薬製剤二号方を解説する論説文中では、通読するには一番肩が凝る部分でもありますが、かといって、ここを避けていたら低レベルの指南書となっていた筈です。

 瘀血阻滞に対する詳細な分析を、かなり短い文章で要約して述べてありますが、内容は相当に濃縮してあり、これだけを熟知しておれば、生薬製剤二号方に限らず、あらゆる活血化瘀の方剤を有機的に応用するための基礎知識として有用であると思われます。

 血は脉中にあって絶え間なく運行し、循環して休まず、五臓を調和し、六腑に行き渡り、百骸を営養する。

 血液は心気の推道・肺気の宣降・肝気の疏調・脾気の統摂・腎陽の温煦という五臓の協同作用が必要で、これによってはじめて停滞や外溢を生じることなく、脉中を正常に運行することが出来ます。

 とは言え、血行不利や瘀血という病理変化については、心肝の二臓との関係がより密接です。

 心は全身の血脉を主り、肝は蔵血の臓器だからですが、より深く考察すれば、心が主る脉は肝が主る筋膜によって構成されるので、「瘀血阻滞」は究極的には肝の病変と考えるべきでしょう。

 瘀血形成の原因は多種多様ですが、以下に主要なものを記します。

 @寒邪の侵襲により、血が冷却されて凝滞する(寒凝血瘀)。
 内に久寒がある場合も同様です(陽虚血瘀)。

 A熱毒や邪の熱化から気営両燔し、営陰に侵入した熱が血を煮詰めて熱盛傷陰や、汗による津液の消耗により営陰が損傷されると、血液が粘稠になって運行不利を生じ、血管壁に瘀血を形成する(熱盛血瘀)。

 B陰液の虧損により、血脉が濡潤されないために、血がスムーズに運行できなくなって瘀滞する(陰虚血瘀)。

 C心気不足や心陽虚衰による推動無力、あるいは肺気虚損や肺寒による昇降不足および助心行血の機能低下、あるいは腎気不足や腎陽虚衰による動力欠乏は、いずれも血流を緩慢にさせる。
 遷延すると虚によって鬱を生じ、気鬱血滞から瘀血を形成する。
 これらのことから、気虚血渋・気鬱血滞の「気虚血瘀」と、これに血の冷却による凝滞を伴った「陽虚血瘀」の病機の存在を類推し理解することが出来るはずです。
 (気虚も陽虚も各臓に見られますが、気虚は肺・脾に重点があり、陽虚は脾・腎に重点があります。)

 D肝の疏泄失調により、気滞血瘀を生じる。

 E痰湿阻滞による気機失調が発展して気滞血瘀を生じたり、痰が直接血流を阻害して瘀血が形成され、瘀血は水道を阻害して痰濁を誘発する(痰瘀交阻)。

 F打撲・外傷など、血隧の異変により、気行や血行が阻害される(跌打損傷)。

 G血溢脉外により、出血が瘀滞する。血熱妄行や脾気虚の統摂不能による血溢などがあります。

 このように、瘀血は多病から誘発される二次的な病理産物であることが多く、それゆえ活血化瘀の薬物だけでは根本解決にはならず、それぞれの瘀血形成の病機(根本原因)に対する方剤の併用が必要となることが多いわけです。

 また、瘀血が除去されないと新血が生じにくいため、遷延すると血虚を伴いやすい。
 それゆえ、活血化瘀薬を多用するとますます陰血を損耗しやすくなるため、補血・補陰の薬物の配合が必要となることも多い。

 さらに強調しておきたいことは、瘀血の形成は究極的には必ず多かれ少なかれ気滞を伴っており、あるいは気滞が直接的な原因となって形成されることが多く、気滞を伴うだけに多かれ少なかれ必ず「痰濁」を伴っているということです。

 また、瘀血は気機を阻害して気滞を増長させ、気滞と瘀血が悪循環を形成しやすく、水道を妨害して水湿内停を誘発して浮腫や痰濁を生じさせるなど、多端な病変を誘発します。
 つまり、瘀血を治療せずにいつまでも遷延させると痰濁を増長させ、また痰濁は血流を阻害して血瘀を増長させ、一方では次第に正気を損耗させるなどにより、胸痺や中風のみならず悪性腫瘍の発生原因となるなど、複雑多変で難治な病変を誘発し兼ねないわけです。

【主要参考文献】

@「中医学」(顔正華主編 人民衛生出版社)
A「中医病機治法学」(陳潮祖著 四川科学技術出版)
B「中医病理」(広東科技出版社)
C「血瘀証的診断和治療」(兪芝江編著 上海中医学院出版社)
D「痰瘀相関学説与臨床」(于俊生編著 科学技術文献出版社)
E「基礎中医学」(神戸中医学研究会編著 燎原)
F「今日の中医診療指針《内科編》」(久米正太郎・趙基恩共著)
G「実用中医内科学 日本語版」(東洋医学国際研究財団)
H「現代中医内科学」(何紹奇主編 中国医薬科技出版社)
I「方儀図解 臨床中医方剤」(王元武・赤堀幸男共著 医歯薬出版株式会社)
J「中医臨床のための方剤学」(神戸中医学研究会編 医歯薬出版株式会社)
K「中国大百科全書 中国伝統医学」(中国大百科全書出版社)
ラベル:瘀血
posted by ヒゲジジイ at 09:30| 山口 ☁| 中医学基礎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする