ご意見やご質問はこちらから⇒●●●


クレーマーは絶対にお断り。付添い人や代理人によるクレーマー豹変率が最も高いので、
ご本人が本気でない場合は、相談をお受けできません。


にほんブログ村 病気ブログ がんへ  

2018年10月24日

陰虚による舌炎・口内炎

 陰虚による舌炎・口内炎について

 麦門冬湯で有効であったべーチェットによるものも含めた口内炎や舌炎に、数例ではあるが同一の病人に対し、心・肺・腎に帰経して胃には帰経しないことになっている「西洋人参」を用いて比較実験してもらったことがある。結果は全例に有効で、べーチェット患者の場合では麦門冬湯以上に効果的であった。
 実験例が少数であるから速断は出来ないが、このことからすると、実際には西洋人参は胃にも帰経している可能性があり、さらには多少とも五臓の陰の大元締である腎陰をストレートに滋補出来る分、麦門冬湯よりも効果的なこともあり得るのかも知れない。

 陰虚が原因で引き起こされた舌炎・口内炎では、「腎陰虚」によるものがあり、また他臓の陰虚との併存によって誘発している場合もあるので、六味丸や麦味腎気丸・知柏腎気丸などが適応したり、あるいは麦門冬湯などと併用しなければならないこともある。

 方剤の選定時には、当然、主訴の舌炎や口内炎とともに一連の症候に基づいて弁証するが、経験上は舌証に陰虚の徴候が認められ、同時に腎陰虚の症候が認められる場合でも、胃弱を訴える者には腎陰虚に対する方剤は使用せず、西洋人参や麦門冬湯加西洋人参で様子を見ることにしているが、胃を傷害することなく効果的で無難という印象である。

 また、気陰両虚・心火旺盛で胃弱の口内炎には清心蓮子飲が良いが、漠然と陰虚証があって胃腸虚弱という場合は、脾陰虚の虚火上炎による参苓白朮散証などのことがある。舌が胖大である筈だから比較的鑑別しやすいようであって、現実には麦門冬湯証や清心蓮子飲証と紛らわしい。但し、筆者の経験では本証の口内炎は少数であった。

 舌炎・口内炎は五臓のいずれの陰虚でも虚火上炎によって発生し得るので、どの臓の陰虚が原因であるのか正確に弁証して適切な方剤を用いるべきである。もしも特定するのが困難であったり胃弱傾向がある者では、麦門冬湯や西洋人参あるいは麦門冬湯加西洋人参、ときには清心蓮子飲などで対処した方が無難であり、かつ有効であると思っている。

 また、胃弱の問題はなく、明らかに腎陰虚が併存している場合は、訳者は好んで麦味腎気丸の製剤を用いて麦門冬湯と併用したことが多く、幸いにいずれもかなりな即効を得ている。

 但し、陰虚による舌炎・口内炎と思われても、陰虚の誘発原因となった胃熱や気鬱化火あるいは五志過極などによる実火が残存していたり、別の原因による実火が併存している場合は、虚火と実火が互結している可能性が強いので、石膏類や黄連解毒湯・竜胆瀉肝湯など適量の清熱瀉火を併用すべきである。
たまには、応援のクリックお願いします!にほんブログ村 健康ブログ 漢方へ
ラベル:舌炎 口内炎
posted by ヒゲ薬剤師 at 08:33| 山口 🌁| 中医漢方薬学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月23日

●日本で常用される「風痰上擾」に対する治療方剤について

 ●日本で常用される「風痰上擾」の治療方剤『半夏白朮天麻湯』『釣藤散』について
          村田漢方堂薬局 村田恭介

 半夏白朮天麻湯や釣藤散あるいは導痰湯や滌痰湯が適応する「風痰上擾」は、脾不運湿によって湿聚生痰し、痰濁が少陽三焦を阻滞し膜原を障害して肝風内動を誘発し、一方では脾虚不運によって肝陰を滋補できないために肝陽が遊離して肝風を生じ、少陽三焦を通路として肝風が痰濁を伴って上擾するものである。

 脾胃論の半夏白朮天麻湯は、同名の方剤半夏白朮天麻湯(《医学心悟》【組成】 製半夏 陳皮 茯苓 甘草 白朮 天麻)に比べて薬味がかなり多く、日本で常用され、製剤化されたエキス製品も各種販売されている。補気健脾・淡滲利水・化痰熄風の効能があり、脾虚湿困・湿聚生痰・痰濁内阻・肝風内動・風痰上擾の病機に適応する。実際の臨床では、めまい・頭重・悪心・嘔吐のみならず、頑固な浮腫に、あるいは下痢や軟便傾向があり軽度の膵炎や潜在的に膵臓が弱っていると思われる者にも有効である。

 釣藤散は日本では特に常用される化痰熄風の方剤であり、平肝清熱・補気健脾の効能を併せ持ち、脾虚肝旺・痰濁上擾・肝陽化風および化火の病機に適応する。但し、風痰による痰濁上擾が顕著であれば半夏白朮天麻湯を、肝陽化風の原因として明らかな肝陰虚が認められれば杞菊地黄丸を、肝陽化火が顕著であれば黄連解毒湯などを併用する必要がある。このような二〜三方剤を併用すべきものに、高血圧症や俗に言うメニエール氏症候群などがあり、脳血管障害の前兆の場合もあるので牛黄(ゴオウ)の併用も考える。血瘀の兆候がわずかでもみられれば、慎重に適量の『生薬製剤二号方』を併用する。

 風痰証が遷延すると風痰証が残存したまま痰瘀互結証に発展することが多く、脳血管障害の後遺症によくみられる。それゆえ、エキス剤を利用する場合は適宜ウチダの『生薬製剤二号方』を用い、あるいは牛黄製剤なども併用するとよい。牛黄には強力な熄風清熱および開竅と豁痰の作用もある。

 但し、釣藤散証のように肝陽偏亢や肝陽化火の傾向がある場合は、血瘀の徴候がみられても単独で『生薬製剤二号方』を用いてはならず、併用する場合においても過量であってはならない。もしも単独で使用したり併用量が過剰であると肝陽偏亢を助長したり、あるいは肝火を盛んにし、却って逆効果となる場合があるので、杞菊地黄丸などの滋陰剤や黄連解毒湯などを併用するなどして、配合バランスを十分配慮して投与すべきである。
たまには、応援のクリックお願いします!にほんブログ村 健康ブログ 漢方へ
posted by ヒゲ薬剤師 at 07:18| 山口 ☁| 中医漢方薬学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月22日

肝経虚寒に対する温肝袪寒法について

肝経虚寒に対する温肝袪寒法の考察
                         村田恭介

●寒滞肝脉と肝陽虚について

 寒邪直中による肝経の病変は、一般的には「寒滞肝脉」と言われ、肝自身の陽虚は「肝陽虚」とも表現される。

 肝陽虚証は、虚によって寒が生じる虚寒証に属し、寒滞肝脉証は寒邪によって病変を生じ「実寒」が主となるので、虚実に違いがある。とは言え寒滞肝脉は、陽気不足で陰寒内盛傾向のある者に好発するので、(肝)陽虚体質との相関関係は無視出来ない。

 つまり、寒滞肝脉証においては、寒邪外犯(この場合は寒邪の直中)による肝経の寒凝気滞という「邪実」の証候と、陽虚体質者における陰寒内盛による寒凝肝脉という「虚寒」の証候の二種類の状況が、常に併存し得ることも考慮しておく必要がある訳である。

 さらに注意すべきは、寒凝によって生じた気滞や血瘀は、遷延すると次第に「化熱」が生じ得るということである

●膠原病に対する応用経験

 筆者(村田恭介)が最近遭遇したものでは、専門医による諸検査で全身性エリテマトーデスの疑い濃厚な十八歳の女性の相談を昨年五月に受けた。 秋・冬・春に手足のレイノー現象が顕著で、顔面の蝶形紅斑が著しい。舌体はやや小型・舌質はやや紅で殆ど無苔。一連の症候に基づいて温経湯に地龍を加えた方剤を投与。(レイノー現象が顕著であった昨年五月・六月および季節的な予防として本年一月・二月のみ当帰四逆加呉茱萸生姜湯のエキス製剤を併用。)これにより、自覚症状の順調な緩解とともに、毎月の検査も抗核抗体1280から翌月には640、その翌月にも320という調子で次第に正常化し、一年後の五月現在はレイノー現象は基本的に消失し、顔面の蝶形紅斑も殆ど消失し、最終的には80に安定して諸検査のみならず自覚症状においても緩解状態を持続している。

 このように、病院のステロイド剤による治療は絶対に避けたいという患者の両親および本人の強い希望があり、病院は検査のみ、治療は訳者の漢方のみで対処することとなったものであるが、比較的単純な方剤運用にもかかわらず、充分な成功をおさめている例である。

 「温経湯」は、衝任虚寒・寒滞肝脉と共に陰虚・血虚・気虚・血瘀が併存する証候に適応するので、肝経虚寒に対する温肝袪寒法の代表方剤の一つとも言えるものである。

●膠原病と肝経虚寒の内在関係について

 最近また、「混合性結合組織病」と診断された三五歳の婦人。某病院における昨年七月の検査では、抗核抗体 1280以上、抗RNP抗体 256以上で、レイノー現象がみられることがら、右記の診断結果が出されている。その他、血沈が65、CRP(一)、白血球3810、赤血球383万、ヘモグロビンは11、血小板20.6万、尿蛋白(一)、尿潜血(2+)、尿糖(一)、GOT36、BUN10、クレアニチン〇・4、血糖84、総蛋白9.2など。

 本病を自覚した初期は三年前の冬からのことで、手の強張りと両肩関節部の疼痛が強く、病院から出されるボルタレンで治療していた。本病の診断が下った昨年は、手足のレイノー現象とともに膝関節部の微熱感を伴う疼痛が激しく、顔面に軽度の紫がかった蝶形紅斑があり、午後から三七度を越える微熱が持続していた。昨年十月には、膝の屈伸困難となり、本年二月まで断続的に病院から出されたステロイド類を継続服用して少し軽快していたが、昼間は微熱程度なのに、夕方から夜にかけて39度の発熱が始まり、膝関節の疼痛も再び増悪したので病院治療をすべて中止。

 現症は、近くの薬局に相談し桂枝加朮附湯エキス錠を購入して、二週間の服用で膝関節の疼痛はかなり軽快するも、疲労感が激しく夜間の高熱は不変、毎日の通勤がとてもつらい状態である。舌質は淡紅で裂紋が多く無苔であるが、常に「骨の髄からの寒気」を感じ、寒い日や曇天で関節痛が悪化。

 常連の患者さんに紹介されて筆者の漢方を求めて来られたものの、昨年七月の検査時よりも明らかに増悪しており、当然諸検査もかなり悪化しているものと考えられる。病院に行けば即刻入院を宣告されてもおかしくない重篤な状態に近いので、もしも漢方治療で効果が少なければ、時を移さず診断を受けた病院に戻るべきことを告げ、三月七日に独活寄生湯加地龍をエキス製剤で一週間。

 これによって夜間の発熱が38度代になるも、食欲不振が激しいので、更に生脉散料エキス製剤を追加する。

 著効を得て食欲が完全に回復し、夜間の発熱も日によって37度代から38度代となる。ところが、三月二一日からは忠告を無視して生脉散を殆ど中止。独活寄生湯加地龍のエキス製剤のみを継続服用中であるが、幸いなことに生脉散の散発的な併用だけでも夜間の発熱は次第に消退。最近は独活寄生湯加地竜のみであるが、四〜五月現在は完全に平熱となり、膝関節痛・レイノー現象などの諸症状も基本的に消退している。

 独活寄生湯は、「外傷於湿に対する袪風除湿法」の方剤でもあるが、病機は肝腎両虚・風湿痺、治法は補虚宣痺とされるだけに、多少とも肝経虚寒の証候が内在している筈である。

 膠原病の病因病機は複雑多変であるから、安易なコメントは差し控えたいが、敢えて愚見を述べれば(当然、風寒湿邪などの外邪侵襲の有無や、各臓腑・基礎物質などに対する基本的な弁証分析を行う前提条件のもとで)、本病ではレイノー現象における肝経虚寒証との関連、寒滞肝脉や肝陽虚との直接的な関係に注目してみることも必要ではないかと愚考しており、併せて寒凝によって生じた気滞や血瘀は、遷延すると次第に「化熱」が生じ易いという観点は、かなり重要な弁証ポイントであるように思われるのである

 これらの愚見に基づき、一人は温経湯加地竜で緩解し、もう一人は独活寄生湯加地竜で緩解するなど、殆ど単一方剤で成分含量の低い製剤でも、比較的短期間で著効が得られたことは、既述の通りである。

 なお、蛇足ながら複雑な配合を必要とした膠原病では、強皮症の二〇代の未婚女性で、レイノー現象はそれほど顕著ではないが、独活寄生湯・防已黄耆湯の各エキス製剤に玉金・田七人参を併用して数年間、これら漢方製剤のみの連用で軽快している例がある。

 また、ステロイド剤を多年継続服用中の皮膚筋炎の五〇代の女性では、レイノー現象も顕著で、鬱病とメニエール症候群・高血圧症などが合併しているため、〇〇丸・生薬製剤二号方・田七人参・四逆散・半夏白朮天麻湯・釣藤散などの各製剤の多剤併用となってしまった。これら各種漢方製剤の数年以上連用で医師の指示によりステロイドも極端に減量でき、鬱病・メニエール症候群のみならず皮膚筋炎自体も緩解状態に持ち込めている例などがある。

●附録<陳潮祖著『中医病機治法学』より>

温肝袪寒法を採用する代表的方剤は、以下の通りである。

〔一〕当帰四逆湯(《傷寒論》)

 【組成】 当帰 細辛 通草 芍薬 甘草 大棗 桂枝

 【用法】 水煎し、一日三回に分けて温服。

 【病機】 寒傷厥陰・血脉凝滞。

 【治法】 温経散寒・調営通滞。

 【適応証】 (1)寒邪が厥陰を損傷して血脉が凝滞し、手足が冷え、脉が細で今にも途絶えそうなもの。

 (2)腹中の左や右に冷える部分があるのを自覚し、あるいは腰から股にかけて、ある

いは身体や足などが冷えるのを自覚し、病歴が五〜十年に亘って治癒しないもの。

 (3)婦人の血気痛にして、腰腹拘攣する者を治す。経水不調、腹中攣急し、四肢酸痛し、或は一身習々として虫行するが如く、日に頭痛する者を治す。〔《類聚方広義》〕

 (4)寒湿在表により、肢体が麻痺・疼痛するもの。

〔二〕当帰四逆加呉茱萸生姜湯(《傷寒論》)

 【組成】 当帰 細辛 呉茱萸 通草 桂枝 芍薬 炙甘草 生姜 大棗

 【用法】 適量の酒と水を加えて煎じ、滓を除去したものを五回に分けて温服。

 【病機】 寒傷厥陰・気血凝滞。

 【治法】 温経散寒・調営通滞。

 【適応証】 (1)当帰四逆湯証があり、胸満・嘔吐・激しい腹痛などを伴うもの。

 (2)霍乱多寒〔寒証の急性吐瀉病〕で手足が厥冷し、脉が微で途絶えそうなもの。

 (3)疝瘕[せんか]の諸証で、腹痛があり包塊が隆起して聚散〔出没〕を繰り返すもの。

 (4)産婦の悪露がいつまでも止まらず、身体の熱感・頭痛・腹中冷痛・嘔吐・軽い下痢・腰脚がだるく痺れたり軽度の浮腫がみられるもの。

 (5)宿飲〔寒飲〕が中焦に停滞することによる吐酸〔酸っぱい水の嘔吐〕・呑酸〔胸やけ〕などの症状、あるいは冷気が衝逆して心下に迫り胸脇を攻めるために生じる乾嘔や涎沫の吐出、あるいは嘔吐・下痢、あるいは腹痛、あるいは転筋〔こむらがえり〕、あるいは婦人の積冷血滞により月経期間が短く量も少ない・腹部がひきつり拘攣し心下〔胃📠部〕や脇下に波及することもある・肩背強急〔肩や背が強張る〕・頭や項部が重く痛むなどがみられ、手足の冷えと微細の脉を伴うもの。

 (6)小児の走腎〔睾丸の遊走〕で、腹痛のために泣き止まず、睾丸が陰嚢部に存在しないもの。

 (7)縮陰証〔男子は陰茎・陰嚢の収縮、女子は恥丘の収縮〕。

〔三〕呉茱萸湯(《傷寒論》)

 【組成】 呉茱萸 生姜 人参 大棗

 【用法】 水煎して一日三回に分け、微温で服用。

 【病機】 肝胃虚寒・濁陰上逆。

 【治法】 温肝降逆。

 【適応証】 肝胃虚寒による乾嘔・よだれやつばきの吐出・頭頂部痛・胃脘部や腹部の疼痛・舌質は淡・舌苔は白滑・脉は弦遅。

〔四〕暖肝煎(《景岳全書》)

 【組成】 肉桂 小茴香 沈香 生姜 茯苓 当帰 枸杞子

 【用法】 沈香をすり潰して粉末にし、他薬を水煎して滓を除去した液で、沈香末を冲服する。

 【病機】 肝寒気滞。

 【治法】 温肝解鬱・行気止痛。

 【適応証】 肝寒気滞による下腹部の疼痛・疝気〔腹部内臓の脱出・ヘルニア〕など。

〔五〕天台烏薬散(《医学発明》)


 【組成】 烏薬 木香(炒)一五g小茴香(炒) 青皮(白身を除去) 良姜(炒) 檳榔子 川楝子 巴豆

 【用法】 先ず巴豆を少し打ち砕き、川楝子と一緒に麸で炒って黒変させ、巴豆と麸を除去し、他薬とともに細末に製し、毎回三gを温酒で服用する。

 【病機】 寒凝気結。

 【治法】 温肝解鬱。

 【適応証】 (1)寒疝〔下腹部・陰嚢・睾丸などの疾病により生じる急性腹痛で、寒冷を誘発原因とするもの〕で、肝経気実・気滞寒凝により睾丸に放散する下腹部痛・脉は沈遅あるいは弦・舌質は淡・舌苔は薄白。

 (2)寒気の凝結による腹痛・月痛経。
たまには、応援のクリックお願いします!にほんブログ村 健康ブログ 漢方へ
posted by ヒゲ薬剤師 at 06:50| 山口 | 中医学基礎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月21日

少陽三焦の組織構造のイメージ

少陽三焦の組織構造私見
(実体が無いと言われる少陽三焦の組織構造モデル!)


 以下は陳潮祖先生の多くの著作類「中医病機治法学」「中医治法与方剤 第三版」などをヒントにしつつ、あくまで村田恭介が平成五年に勝手にイメージした「少陽三焦」の立体構造モデルである。臨床に直結したあらゆる中医学理論を検討する時に大変重宝しているので、当時の愚見として参考に供したい。

 手の少陽三焦は、身体の外殻の裏で臓腑の外にある 膜腠(膜原と腠理)部分である。膜腠は、外は肌表に通じ内は臓腑に連絡し、上は巓頂から下は足に至り、五臓六腑・表裏上下すべてが三焦と連絡し、津気が昇降出入する区域である。

 膜原とは臓腑や各器官・肌肉の組織間などを膜状に包み込む膜組織(細胞状の無数の管道となっている)であり、腠理とは膜(膜状の膜組織)外の間隙である。

 肝は筋膜を主り、筋は膜が円形に管道を形成した集合体であり、管道中を営血が流通し、管道外の間隙を津気が流通する。膜は肝が主る筋の延長で、常に陰液による濡養を必要とする。

 あらゆる臓腑や経絡・諸器官(気管・血管・卵管・尿管など)の実質は、膜が円形に管道を形成した無数の集合体である筋膜で構成され、精気血津液という五種の基礎物質が運行出入する通路となっている。つまり、筋膜組織内の管道中を営血が流通し、管道外の間隙を津気が流通するのである。

 また臓腑の外壁や腑の内壁および血管・気管・胆管などの外壁と管の内壁は、津気が運行する通路である三焦の膜腠に被(おお)われている。

 注意すべきことは、臓腑・経絡・諸器官を構成する筋膜組織中の無数の管道それぞれの間隙は、津気が出入する通路となっているので、実際には臓腑・経絡・各器官の組織中にも少陽三焦の通路が存在するのである。それゆえ、「少陽三焦の膜腠はあらゆるところに存在する」といわれるのであり、このことは「少陽三焦は臓腑の外」とされることに一見矛盾するようにみえるが、三焦の気機が昇降する区域を述べたものと理解すれば、矛盾はない。

 なお、筋膜に多少とも病変が生じれば直ぐに基礎物質の正常な運行が障害されるのは、肝の疏泄機能が肝の主る筋膜と密接に関係しているからである。

 このような少陽三焦の組織構造の実体をよく理解しておけば、たとえば「腠理に停滞した痰が膜原を傷害したために内風を生じる」とあるように、痰が膜原を傷害するとどうして内風を生じてしまうのかという意味を理解する場合に、膜原は肝が主る筋膜に属していることを認識していれば、「肝は風を主る」ことからすぐに納得できるはずである。
たまには、応援のクリックお願いします!にほんブログ村 健康ブログ 漢方へ
ラベル:少陽三焦
posted by ヒゲ薬剤師 at 07:59| 山口 ☀| 中医漢方薬学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月20日

穀精と腎精について

中医学基礎:「精」−穀精と腎精について

   「精」− 穀精と腎精について 村田漢方堂薬局 村田恭介著

 飲食物を消化吸収した後に生成される「水穀の精」(穀精)は「後天の精」であり、精気血津液における精であると同時に、気血津液を生成する基本原料でもある。つまりは各臓腑の機能活動の物質的基礎であるから「臓腑の精」ともいわれる。

 さらに、この「後天の精」は、腎に貯蔵される「先天の精」という生命活動の源泉を絶えず補充し、人体の生命活動を維持する基礎物質でもある。五臓六腑を充盈した後は腎に貯蔵されることになるが、一般的には、この腎に貯蔵される精(腎精)を「精気血津液」という基礎物質における「精」であるとされている。

 しかしながら、ものの順序として、まずは飲食物を消化吸収した後に生成される「水穀の精」が、精気血津液における精(穀精)であり、つぎに穀精の一部が腎陽の気化作用によって腎精と化し、腎に貯蔵されることになったものも同様に、精気血津液における精(腎精)である、と認識すべきであろう。

 このように、穀精と腎精をともに包括したものが「精気血津液」における「精」の意味であるはずであるが、この「穀精」の概念については、基礎理論面では考察されても実際の臨床面においては、比較的看過されがちのように思われる。

 「穀精」の概念の臨床的意義は大きく、とりわけ「穀精不足」の病態の明確化は不可欠である。腎精不足は言うまでもなく各種の補腎薬が適応するものであるが、いっぽう「穀精不足」については、少なくとも脾虚の病態に関連し、補中益気湯・参苓白朮散・四君子湯などが適応することが多い。

 穀精と腎精の概念は、脾と腎の密接な関係を深く掘り下げて考察し、具体的な病態認識を行う上で極めて有意義であり、合理的で整合性のある弁証論治の内容を、さらに充実拡大させるものであると愚考している。穀精と腎精の密接な関係を有機的に理解していれば、卑近な例として、補中益気湯合六味丸や補中益気湯合海馬補腎丸などが適応する病態を認識する上でも、極めて有意義な概念と思われるのである。
たまには、応援のクリックお願いします!にほんブログ村 健康ブログ 漢方へ
ラベル:穀精 腎精
posted by ヒゲ薬剤師 at 11:51| 山口 ☀| 中医学基礎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする